日本司法書士会連合会

Case3 定年まで勤め上げた会社を退職したが、一向に『退職金が支給されず』困っている

長年勤めていた会社を定年退職したのですが、退職金が支給されません。どうしたらいいでしょうか?

労働基準法には、退職金を支給しなければならないという根拠になる規定がありません。ですから、退職金の支給については、会社ごとの就業規則や労働協約、労働契約などで、支給基準が定められていることが必要です。

入社時の契約は何十年も前なので覚えていませんし、会社の就業規則についても詳しく把握していません。

就業規則や労働契約などで退職金支給規定がない場合、会社に退職金支払義務は発生しません。ただ、労働基準法上、常時10人以上の労働者を使用する使用者は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届け出なければならないことになっています。ですから就業規則を見たことがなかったとしても、会社が就業規則を作成している可能性は十分にあります。

労働基準監督署に行けば、誰でも就業規則を見せてもらえますか?

会社に見せてもらえれば一番いいのですが、難しいようであれば、労働基準監督署でその会社の従業員であったことを証する書面を提示して、就業規則を閲覧することができます。ただ、会社に就業規則があったからといって、退職金規定があるとは限りません。同僚の協力を得て資料収集することも検討してください。

1年前に退職した同僚や他数人の社員からは、退職金をもらった話を聞いているのですが。

労使慣行、個別合意、従業員代表の合意などで、支給金額の算定が可能な程度に定められていれば、たとえ規定がなくても退職金を受け取れるケースがあります。判例では労使慣行の存在を認定した例もあれば、否定した例もありますので、一概にどちらとは言いがたいのですが。

もし、退職金が請求できる場合は、いつごろ支払われますか?

就業規則で支払時期が定められている場合は、その定めによりますが、定めがなければ、あなたが退職金を請求したら遅滞なく会社は支払う必要があります。退職金請求権の消滅時効は5年ですので、まだ時間的ゆとりがありますが、退職金支給基準があるにもかかわらず会社が支払わない場合は、会社側の経済的状況がよくない可能性も考えられます。もし、会社が破産した場合、退職金の一部は優先的に支払われることもありますが、全額受け取れない可能性も出てきますので、できるだけ早く退職金支給基準の確認をして、請求する必要がありそうですね。

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