総会決議集
日本司法書士会連合会は、広域に渡り避難する東京電力福島第一原子力発電所事故被害者への継続的支援を行い、かつ、国に対し、法的整備を求める決議
【議案趣旨】
日本司法書士会連合会は、全国各地に避難する東京電力福島第一原子力発電所事故による被害者の被害救済活動を進めるために下記の事項に取り組むことを決議する。
- 1.
- 被害者が、東京電力からの損害賠償の手続きを進め、生活再建のために必要な制度の利用機会を失わないよう、全国各地において相談体制を構築し、相談会等の開催を行う。
- 2.
- 「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」の理念を実現させるため、被害者の望む支援施策及び関連法案等の整備が実現されるよう、国や行政に対する積極的な提言・助言を行う。
- 3.
- 被害者が、謂われなき差別・偏見を受けないよう、社会に対する啓発活動を行う。
- 4.
- 上記活動が真に意味あるものとなるよう、行政、他の職能団体、支援団体及び当事者団体との協働を積極的に行う。
2013年(平成25年)6月21日
日本司法書士会連合会 第76回定時総会
【提案理由】
東日本大震災及び東京電力福島第一原子力発電所事故に起因する避難者の数は、福島県県内での避難者が9万人以上、県外への避難者が5万以上になります。また、福島県在住者だけでなく、隣接する北関東の地域の人々や、ホットスポットと呼ばれる放射線量の高い地域に住む多くの方々が他県へと避難しており、その数は膨大なものとなります。特に福島県外からの避難者は、その大多数の方々が法的な支援を受けていないことに加え、情報格差も相まって、ますます孤立化をし、疲弊し続けているのが現状です。いわゆる「広域避難問題」が、福島県だけでなく全国各地で深刻な問題を生じている現状に対して、市民の権利擁護に取り組むべき司法書士が不知を決め込むわけにはいきません。事故から2年が経過し、多くの問題が顕在化しはじめている今、全国に存在する司法書士の力を活用し、被害者救済に取り組む必要があります。
そのための具体的な取り組みとして、全国各地の支援団体等と協力をしながら、必要な相談会や訪問活動等を行う事を求めます。
また、平成24年6月27日に制定された「東京電力原子力事故により被災した子どもをはじめとする住民等の生活を守り支えるための被災者の生活支援等に関する施策の推進に関する法律」は、法律こそ制定されたものの、関連する法整備はおろか、同法に明文で規定されている「基本方針」の作成すら行われておらず、期待する被害者の気持ちは裏切られ続けています。日本司法書士会連合会としてもいち早く被害者救済がなされる施策が行われるよう、国に対し提言をおこなっていく必要があります。
既に避難生活は2年を超え、被害者は経済的にも精神的にも限界になってきています。さらに多くの被害者は、世間からの誤解偏見を恐れ、自分が避難してきたことすら打ち明けられず、相談する事も出来ていません。避難元でも避難することに対して、理解を得る事も出来ずに苦しみ、避難先では、知り合いもいない中で事実を打ち明ける事も出来ず将来に不安を抱えたまま生活を続ける中で、何らかの手を打っていかなければ今後、自死などの重大な問題に繋がっていくことは明白です。市民に身近な法律家である司法書士として、上記問題に早急に取り組むことの決議を求めます。