会長挨拶
私ども司法書士は、永年に亘り登記制度の専門法律家として日本の不動産取引の安全をはかるため登記制度の信頼性を支え、それを通じて市民の権利保全に寄与してまいりました。
司法書士と申しますと、大部分の皆さんはおそらく、土地や建物を買ったり、相続が開始したときの不動産登記手続や、会社を設立したり役員や定款を変更するときの会社・法人登記手続などを行う、登記の専門家というイメージをお持ちかと思います。
確かに、そのとおり、司法書士は登記の専門家であることに間違いはございません。
しかし、「司法書士」という文字をもう一度よくご覧ください。司法書士の司法とは、立法機関である国会や行政機関である内閣府等に対して、裁判所を意味する言葉でもあります。つまり、司法書士という言葉は、沿革的には裁判所(司法)に提出する書類の作成を業とする職業を意味しているわけで、実際、私たち司法書士は現在も、裁判所に提出するあらゆる書類の作成を手がけております。
さらに、近年においては、簡易裁判所における民事訴訟代理権等を有する司法書士を中心に、多重債務者の問題をはじめ消費者問題や敷金の返還請求等に積極的な取り組みをして市民生活上の紛争の予防ならびに権利救済に重要な役割を果たしてきております。
また、私たちは「公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート」を設立し、高齢者や障害のある方々が、人間らしく平穏な社会生活を送ることができる社会を目指して創られた成年後見制度に対しても、活発な活動をしています。最近の統計においても、親族を除く専門職後見人に司法書士が一番多く就任しているとの実績が示しているように、今では、成年後見といえば司法書士に相談を、といわれるまでになり、着実な成果を上げております。
社会の環境がどのように変化しようとも、市民一人ひとりの生活する上での権利が少しでもおろそかにされることがあってはなりません。全国津々浦々にあまねく法の支配が行き届き、市民の司法へのアクセスは充分に保障されなければなりません。私たちは、市民の司法アクセスの機会をより充実させるために、全国各地の司法書士会に総合相談センターを設置し、いつでも皆さんからのご相談をお待ちしております。
司法書士は、常に市民に寄り添う身近な法律家として歩んできました。そして今後も「市民のくらしの中の法律家」として皆さんにとって、有用で頼り甲斐がある存在であり続けるために更なる努力を続けて参ります。司法書士の、これからの活躍にご期待ください。