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総会決議集

2010年(平成22年)06月25日

司法書士法の抜本的な改正実現を求め、1.使命規定の創設 1.相談に関する規定の整序 1.法律関係に関する文書の作成権限の明確化 1.懲戒請求における除斥期間の創設 の各事項につき速やかに整備することを求める決議

日本司法書士会連合会

第72回定時総会

 日本司法書士会連合会は、司法書士法の抜本的な改正実現を求め、
 1.使命規定の創設
 1.相談に関する規定の整序
 1.法律関係に関する文書の作成権限の明確化
 1.懲戒請求における除斥期間の創設
の各事項につき速やかに整備することを求める。

 

【提案の趣旨】

 今、我々が業務を行うに際し、対応に苦慮している諸問題を解決するにあたり、現行の司法書士法(以下、「法」という)がその指針として十分であるかといえば甚だ心許ない。そこで、その抜本的な改正を求めると同時に、その端緒として、直面する喫緊の課題に我々が自信をもって対応できるよう上述の四点につき速やかに整備することが必要と考える。したがって、日本司法書士会連合会は、これら四点の早期の法整備を求め、関係諸機関に働きかけるなどの強力な推進活動をし、他団体に対しても賛同を得るための積極的な活動をすることを求める。

 

以上のとおり決議する。

【提案の理由】

1.はじめに

 

 提案者並びに賛成者は、司法書士制度が国民の司法サービスへのアクセス向上に資するために必要と考える 1,国民の権利擁護 2,制度の将来像の創造 3,制度の安定 の3点から法の改正を求めるものである。

 各事項の趣旨及び理由は以下の通りである。

 

2.使命規定の創設

 

(1)趣旨

 使命規定を創設すること。

 

(2)理由

 法は目的規定及び職責規定をもって、司法書士の使命の自覚を促す趣旨が含意しているとされている。しかし、目的規定はあくまでも「司法書士制度」の目的であり、「司法書士」の使命ではない。また、平成14年改正にあたっての参議院法務委員会においても同趣旨の答弁がなされている。一方、司法書士は司法書士倫理前文において、自らの使命を自覚し、その達成にむかって自律的な倫理規範を定めている。これらから、法文上、使命が含意されているだけではなく、明らかにすることに問題はないと考えられる。また、制度の将来像を描くにあたり、早期に自立的な使命規定を明らかにすることが必要であると考える。

 

3.相談に関する規定の整序

 

(1)趣旨

 相談業務を一つの独立した規定として確立し、整序すること。

 

(2)理由

 業務範囲内の問題につき相談を受けることができるのは、規定の有無に関わらず当然のことである。ここでの問題は、民事に関する紛争でその価額が140万円を超える場合やその価額が不明な場合、あるいは業務と密接に関連するとまではいえないような周辺領域の相談について、自らの意思決定により自らの判断をもって意見を述べること(以下、「法律判断」という)につき規定が整序されていないということである。

 

 国民が我々に相談する際、それが業務範囲内かどうか、業務に密接関連する範囲内かどうかといった意識はないであろう。自らの抱える法的問題について、これを予防・回避したいとか解決したいとかといった意識しかないと思われる。

 

 このような相談の実態に対処するためには、思い切って、相談を業務範囲から開放し、整序する必要があると考える。さもなくば、国民生活に無用な時間的経済的損失を被らせることになりかねないからである。

 

 紛争の予防・回避であれ、紛争の解決であれ、当該相談に対し、法律判断をすることと、当該事案における最終的な処理に関与することとは別個の問題である。当該事案が140万円を超える民事紛争であったとしても、最終的な処理において業務範囲を超えて我々が関与することはないのである。

 

 相談業務の充実を図ることは、国民生活の安定及び円満な発展に資するのであり、そのことを十分認識したうえで規定を整序しなければならないと考える。

 

4.法律関係に関する文書の作成権限の明確化

 

(1)趣旨

 法律関係に関する文書の作成権限を有することを明らかにすること。

 

(2)理由

 ここで問題にする法律関係に関する文書とは、業務(上記相談の規定と密接に関連する)文書である。例えば、不動産売買契約書、賃貸契約書、営業譲渡契約書、遺産分割協議書の作成、登記手続が関係しない議事録の作成、あるいは相隣関係において通行の便益のため開設した共用通路の費用分担に関する確認書の作成、離婚に伴う合意書の作成などである。これらの法律関係に関する文書を作成することについて、争訟性の有無にかかわらず関与できなければならない。

 

 上記いずれの事案も、関係当事者が一定の法律関係を示し、紛争予防のために我々に依頼をするのであり、依頼を受けた我々が法律判断をし、これを作成する必要がある。このような場合、明確な根拠がないとして、我々がその文書の作成をためらうことになれば、国民生活にとって極めて損失が大きいものとなろう。一般的に、紛争予防の段階よりも紛争を解決する段階における方が、より時間的経済的労力を費やさなければならないからである。

 

 法律関係に関する文書の作成権限の根拠を明確にすることは、国民生活の安定及び円満な発展に資することになるのであり、その予防司法としての観点を十分に踏まえ、これを早期に実現すべきであると考える。

 

5.懲戒請求における除斥期間の創設

 

(1)趣旨

 懲戒請求における除斥期間を創設すること。

 

(2)理由

 法は第6章において懲戒に関する規定をおいている。しかし、この規定においては、除斥期間の定めはなく、文理上、司法書士の懲戒請求はいつまでも可能であることとなっている。なお、弁護士法においては、3年の除斥期間が設けられている。法と弁護士法の相違については、弁護士の場合その懲戒事由は期間をあけず明らかになるが、司法書士の場合懲戒事由は相当期間経過してから明らかとなることが予想されることからくる違いであると説明される。

 

 事実、法に除斥期間がないことから十数年前の事案により懲戒をうけた事例も散見される。確かに、法律の改正に伴い司法書士の権限並びに業務の範囲が拡大したためその負うべき責任も重くなっている。

 

 しかしながら、法施行規則(以下、「規則」という)において領収書の保存義務期間は3年(規則第29条)、事件簿の保存義務期間は5年(規則第30条)と定められている。また、兵庫県司法書士会会則(以下、「会則」という)において本人確認記録の保存義務期間は10年(会則第99条の2)とされている。そうすると、懲戒請求された事案が、これらの保存義務期間より以前のものであるような場合、これに対し書類等をもって弁明することは著しく困難なものとならざるをえない。すなわち、現行制度を前提としながら、それ以前の事由により懲戒がなされていることは、制度を不安定なものとすることに他ならない。制度の安定は国民の権利擁護に資するものであることから、期間について検討し、早期に懲戒請求における除斥期間を創設する必要があると考える。