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会長声明集
2012年(平成24年)08月01日
貸金業法の改悪に反対する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司
平成18年12月13日に成立した改正貸金業法が平成22年6月18日に完全施行され、出資法の上限金利の引き下げや総量規制(年収の3分の1以上の貸 付の禁止)、みなし弁済制度の廃止等が実現した。これらの改正により、貸金業者5件以上から借入がある債務者は約171万人(平成19年3月末)から約 44万人(平成24年3月末)へ激減し、自己破産件数は平成15年の約24万件をピークに平成23年は約10万件へと減少した。さらに、多重債務を原因と する自殺者数も1973人(平成19年)から998人(平成23年度)に減少するなど、同改正は多重債務問題対策に著しい効果をもたらしたことは明らかで ある。
また、増加が懸念されたヤミ金融被害も、警察庁ホームページの公表データによれば、増加した事実はなく、被害者数はむしろ減少傾向にある。また、個人事 業者の資金需要についても、現行の貸金業法において総量規制の例外規定があり、個人事業主においては、返済能力の範囲で総量規制を上回る借入れが可能であ る。したがって、現行の貸金業法は順調に多重債務問題対策の成果を上げている。
しかし、現在、「利息制限法及び出資法の上限金利の緩和」「総量規制の撤廃」を骨子とする貸金業法・利息制限法の改悪を図ろうとする動きがある。すでに 自民党「小口金融に関する小委員会」が改正案をとりまとめ、民主党内でも、「財務金融部門改正貸金業法検討ワーキングチーム」が制度見直しに向けた中間整 理案をまとめ、「中小・零細事業者向けの短期貸し付けの上限金利を現行の15〜20%から引き上げ」「総量規制の撤廃」の方向で検討に入っている。これら の改正の動きは、多重債務問題の解決を目指して改正された現行の貸金業法の主旨を骨抜きにするものであり、決して許せるものではない。
現在、進められている改正の方向性は、貸金業界の利潤増大を第一に考えたものであり、国民全体にとって長年の課題である多重債務問題の解決とは逆行するものである。
したがって、当連合会は「利息制限法及び出資法の上限金利の緩和」及び「総量規制の撤廃」を柱とする貸金業法の改正には断固反対する。