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会長声明集
2024年(令和06年)04月11日
デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書について(会長談話)
日本司法書士会連合会
会長 小 澤 吉 徳
当連合会では、公益社団法人商事法務研究会に設置された「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会」(以下「本研究会」といいます。)に委員を派遣し、意見を述べてまいりました。
デジタル技術の進展はめざましく、司法書士がデジタル技術を業務に取り入れ、依頼者に提供することで、依頼者は、より効率的で公正な司法・行政手続を行うことができるようになります。
特に、遺言に関する手続は、個人の最終意思の実現のために、極めて重要であり、大相続時代を迎える我が国にとって、よりアクセスしやすく、理解しやすく、そして確実なものにすることが求められます。
本研究会では、高齢化社会・高齢多死社会の到来、家族の在り方の変化又は多様化という社会状況に対応する観点から、遺言制度を国民にとってより一層利用しやすいものとするため、デジタル技術を活用した遺言制度の在り方について検討してきました。そして、令和5年10月5日から6回にわたる精緻な検討の結果、令和6年4月10日に報告書を公表しました。
報告書でも触れられているとおり、デジタル技術を活用した遺言制度の普及は、空き家・所有者不明土地問題の解決にも寄与する重要な手段であると考えています。遺言の作成が容易でないことにより遺言の利用を躊躇している方々に対しては、デジタル技術を活用することで手続面のハードルを下げることが期待できます。遺言が増加することにより、不動産の相続手続が円滑に進み、令和6年4月1日より施行された相続登記の申請義務とともに、空き家・所有者不明土地問題の根本的な解決につながると考えています。
報告書が提案するデジタル技術の活用による遺言制度の改善に向けて、当連合会は、デジタル技術を利用することで、現行制度と同様の真意性・真正性が確保されるよう、最新のデジタル技術を研究するとともに、デジタル技術になじみのない方を含む誰もが、デジタル技術を活用した遺言を利用できるような制度設計を検討していきます。また、遺言には、高度な機微情報が多く含まれることから、遺言者のプライバシー保護とデータのセキュリティ確保に最大限の注意を払いながら検討を進めつつ、利用者のために、司法書士が最新のデジタル技術を十分使いこなすことができるよう、デジタル技術に関する最新の研修を継続的に行うことで、国民の権利を擁護し、もって自由かつ公正な社会の形成に寄与していきます。