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会長声明集
2024年(令和06年)04月01日
改正された犯罪による収益の移転防止に関する法律の施行にあたって(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 小 澤 吉 徳
令和4年12月9日に公布された「国際的な不正資金等の移動等に対処するための国際連合安全保障理事会決議第千二百六十七号等を踏まえ我が国が実施する国際テロリストの財産の凍結等に関する特別措置法等の一部を改正する法律」に基づき、改正された「犯罪による収益の移転防止に関する法律」(以下「犯収法」という。)が令和6年4月1日に施行された。
今般の犯収法の改正は、令和3年8月に公表された金融活動作業部会(FATF)による第4次対日相互審査の結果を受けて、わが国がマネー・ローンダリング及びテロ資金供与等対策(AML/CFT)を一層強化し、国際基準であるFATF勧告に適合させるための施策の一環として行われたものである。
第4次対日審査報告書においては、特に指定非金融業者及び職業専門家(DNFBPs)の顧客管理、DNFBPsによる疑わしい取引の報告義務、DNFBPsに対する監督義務といった項目について水準を達成していないと評価された。これは、金融機関に関する法整備が進む一方で、マネー・ローンダリング等の手法は多様化しており、法律や会計の職業専門家がマネー・ローンダリング等に利用されるリスクは増大しているとされているからである。
司法書士は、これまでも登記、供託、訴訟その他の法律事務の専門家としての使命と職責に基づき、不実の登記を未然に防止し、違法行為を助長しないよう、本人確認及び意思確認を徹底するとともに、犯収法における特定事業者としての義務を全うして犯罪収益等の移転防止に寄与してきた。今般の犯収法改正を機に、これまで以上に法律専門家としての責任ある対応が求められている。
改正犯収法第4条では、これまで司法書士を含む一定の士業者は適用除外されていた第1項第2号から第4号までの事項についても取引時確認の対象となった。すなわち、司法書士が特定取引を行うに際して、従前の本人特定事項(1号)のほか、取引を行う目的(2号)、職業又は事業の内容(3号)並びに実質的支配者の本人特定事項(4号)についても確認を行うことになる。さらには、犯収法改正の背景となっているFATF勧告では、リスクベース・アプローチ(取引のリスクを特定・評価し、リスクに応じて対応を行う手法)の有用性が明確に指摘されており、犯収法に規定された最低限の確認だけでなく、より詳細な資料収集や事実確認を行うこともある。確認事項が増えることにより取引当事者及び関係者にも一定の負担が及ぶことになるが、当連合会としてもマネー・ローンダリング等を防止し、適正な取引を実現するための措置であるので、理解と協力を得られるよう周知に努めていく。
当連合会では、引き続き、関係諸規定を整備するとともに、関係機関とも連携しながら、司法書士に課せられた守秘義務、個人情報の保護を遵守はもとより、実効的なマネー・ローンダリング及びテロ資金供与等への対策を推進していく。