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会長声明集
2024年(令和06年)03月11日
東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故から13年~寄り添い、語り継ぐ大切さを胸に刻んで~(会長談話)
日本司法書士会連合会
会長 小 澤 吉 徳
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故の発生から13年となりました。巨大地震、大津波、原発事故の複合災害により、関連死を含む死者・行方不明者は22,212人に上ります。あらためて、この震災で犠牲になった方々のご冥福をお祈りするとともに、未だふるさとを離れ、全国各地で避難生活を送らざるを得ない方々に心よりお見舞いを申しあげます。
政府は、2021年度から2025年度までを「第2期復興・創生期間」と位置づけ、「被災地の自立につながり、地方創生のモデルとなるような復興を実現する」という第1期復興・創生期間の理念を継承して、復興事業の取組みを進めてきました。地震・津波被災地域における人びとの住まいや産業、なりわいの再生は順調に進展していると評価されています。その一方で原子力災害被災地域の福島県では、帰還困難区域を含めて避難指示が解除され、住民帰還のための施策が取り組まれていますが、原発事故による福島県内外への避難者が26,000人余りいるという厳しい現実もあります。
さらには、令和5年8月22日に決定されたALPS処理水の海洋放出による風評被害への懸念も払しょくされていません。現在中間貯蔵施設で保管されている原発事故に伴う除染で生じた土壌を30年以内(2045年3月)に福島県外で処分完了するという法律に基づく施策についても、実現の道筋すら不透明な状況です。また、原子力損害賠償紛争審査会による中間指針第五次追補を踏まえた追加賠償についても、連絡先が特定できない対象者の把握に懸命な取組みがなされています。
このような状況のもと、被災者の高齢化や避難生活の長期化に伴う相談内容の変容にも対応する必要があり、当連合会では、被災地を始め、避難者が居住する全国各地の司法書士会と連携をしながら、誰もが気軽に相談できる環境を整備しています。原子力損害賠償請求については、迅速かつ着実な賠償の実現に向けて対象者への広報に協力をするとともに、今も初回申立ての件数が半数を超える原子力損害賠償紛争解決センターへの和解仲介申立(原発ADR)手続にも関与しているところです。
震災と原発事故の記憶の風化が懸念される中、経験を伝え継ぐ営みは防災の礎にもなります。本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震における被災者支援においても、司法書士が現場での経験を活かした活動を行っています。
「東北の復興なくして日本の再生なし」の言葉を具現化するためにも、私たち司法書士は、引き続き被災地、被災者に寄り添い、そして経験と教訓を語り継ぐ大切さを胸に刻み、これからも復興の道をともに歩んでいきます。