-
会長声明集
2024年(令和06年)03月07日
成年後見制度の在り方に関する研究会報告書について(会長談話)
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳第1 はじめに
本日、公益社団法人商事法務研究会「成年後見制度の在り方に関する研究会(以下「在り方研究会」といいます。)」において、令和4年6月7日から令和6年2月22日までの約2年間にわたり開催された全22回の会議結果にもとづく取りまとめの報告書(以下「報告書」といいます。)が公表されました。
在り方研究会には、当連合会を代表して委員の立場で参加し、意見を述べてきましたが、報告書の内容を踏まえ、今後も検討を重ねます。第2 報告書の概要
成年後見制度の利用の促進に関する法律(平成28年法律第29号)(以下「利用促進法」といいます。)に基づき策定された第二期成年後見制度利用促進基本計画(以下「基本計画」といいます。)は、成年後見制度の利用促進に向けて総合的かつ計画的に講ずべき施策の1番目の項目に「成年後見制度の見直しに向けた検討」を掲げ、在り方研究会ではその中で指摘された様々な事項について議論し、それらをこの報告書で整理しています。
議論した主な論点は、①本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用する制度の導入(必要性・補充性の要件)、②本人の判断能力を基準とする現在の成年後見制度の3類型の在り方、③成年後見人等の柔軟な交代、④成年後見人等の報酬の在り方、⑤任意後見制度の在り方などですが、報告書は、成年後見制度に関連する上記以外の多くの事項についても取り上げています。第3 今後の議論の方向性
基本計画は、成年後見制度の在り方の方向性として、高齢になっても、障害があっても、誰もがともに暮らし、ともに生きることができる共生社会を実現するための地域におけるネットワーク(「権利擁護支援の地域連携ネットワーク」)を構築し、全国の自治体に制度運用の中核となる機関を設置して、こうしたネットワークの中で、成年後見制度を必要とする人が、誰でも容易に制度にアクセスできるようにするとの考えを示しています。
また、在り方研究会においては、上記①の「本人にとって適切な時機に必要な範囲・期間で利用する制度の導入」に関して相当程度の時間を割いて議論を重ねてきました。他方、我が国も批准した国連障害者権利条約は、誰もが意思決定する能力があることを前提として障害者本人の自律と自立、意思及び選好の尊重を強く求めています。これらに鑑みると、今後は、より利用しやすく、そして、より本人の意思や希望に沿った制度へ向け見直しの議論が進んでいくものと思われます。第4 当連合会の今後の取組み
今後、報告書における取りまとめを受けて、法務省の法制審議会に新たな部会が設置され、成年後見制度の在り方の見直しの動きが加速していきます。
そこで、当連合会では、これまでの実績を踏まえ国民の権利を擁護し自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とする司法書士を、専門職後見人として引き続き供給できるよう取り組むとともに、権利擁護支援のための法制度の要である成年後見制度の見直しについて引き続き検討を行い、成年後見制度のなかでも本人の自己決定権を最も尊重する制度とも言われている任意後見制度の利用促進とその周知についても重層的に検討を行っていきます。