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会長声明集
2023年(令和05年)03月11日
東日本大震災そして東京電力福島第一原子力発電所事故から12年~被災地の今を見つめ、課題解決のために~(会長談話)
日本司法書士会連合会
会長 小 澤 吉 徳
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故から12年。
あらためて、この震災で犠牲になった多くの方々のご冥福をお祈りするとともに、未だ避難生活を送らざるを得ない方々に心よりお見舞いを申しあげます。
復旧・復興工事はほぼ終わり、被災地では新しい風景が広がっています。その地での人々の営みは始まってはいるものの、元のような賑わいは戻ってはいないのではないでしょうか。過疎化が進む東北の被災地では、震災を契機にふるさとを離れた人々の帰還は進んではいないのが現実です。そのような中、当連合会では、災害復興を目的として、東北の被災地において被災者が気軽に無料相談をすることができる災害復興支援事務所を設置してきました。現在では、福島県に原発事故被害者の支援拠点としてふたば災害復興支援事務所を運営しています。岩手、宮城両県には過疎対策の司法書士事務所の運営を支援して、いわゆる司法過疎地の住民の法的ニーズに応えるために地域に根差した取組を続けています。震災後も様々な苦悩に直面する住民のみなさんと向き合い、耳を傾けて問題解決にあたる司法書士の姿がそこにはあります。
復旧・復興が進む一方、東京電力福島第一原子力発電所の事故(以下「原発事故」という。)からの被害回復に取り組む福島県における問題は未だ山積していると言わざるを得ません。
原発事故から12年という年月を経た今も、放射能でふるさとを汚された多くの人々は避難生活を強いられ、長期避難による心労が重なり、体調を崩して命を落としてしまう「震災関連死」は増えています。福島県の発表では、本年2月末でその数は2,335人となっており、直近1年間でも4人増えています。地震や津波による直接死者の数1,605人を上回り、関連死だけが増え続けています。
また、原発事故の賠償問題では、これまでの賠償指針を上回る賠償を命じる裁判が確定したことにより、国の原子力損害賠償紛争審査会が9年ぶりに指針を見直し、昨年12月20日に「中間指針第五次追補」として示されました。これは、指針が被害の実情に見合わないという被害者の声を反映したものと評価します。これを受けて、東京電力は本年1月31日に追加賠償基準の概要を発表しました。その中では対象者、対象損害が示され、専用窓口も設けられていますが、全国各地で避難生活を続ける方々への情報が十分に行き届くか、高齢化している原発事故被害者のサポートは十分か等々の懸念があります。
当連合会では、引き続き被災地で生きる人々、また避難先で生きざるを得ない人々にも寄り添い続け、その声を受け止めるため、全国の司法書士会、関係機関・団体との連携をさらに強化して取り組み、被災者の生活再建、日々の生活の安寧のために力を尽くしてまいります。
司法書士は、国民の権利を擁護し、自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命としています。これからもこの震災、原発事故の被災者・被害者の権利と生活を守るために力を尽くしてまいります。