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会長声明集
2020年(令和02年)07月31日
改正司法書士法の施行にあたって~社会の期待に応え,その使命を果たす
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
令和元年6月6日,司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律(令和元年法律第29号)が成立(同月12日公布)し,本年8月1日から施行されることとなった。
この改正法においては,近時の司法書士制度及び土地家屋調査士制度を取り巻く状況の変化を踏まえ,司法書士及び土地家屋調査士について,それぞれその専門職者としての使命を明らかにする規定が設けられ,懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改める等の懲戒手続に関する規定の見直しが行われたほか,社員が一人の司法書士法人及び土地家屋調査士法人の設立を可能とする等の措置が講じられた。ここで司法書士・土地家屋調査士を取り巻く状況の変化として指摘されている点は,(1)簡易裁判所における訴訟代理や成年後見・財産管理業務への司法書士の関与が大幅に増加したこと,(2)ADR手続における代理や登記所備付地図の作成等の分野において,土地家屋調査士の活躍の場が拡大していること,(3)空き家問題・所有者不明土地問題への対応,自然災害における復興支援等に,それぞれ専門家として参画していることである。この改正により,司法書士は,司法書士法の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として国民の権利を擁護し,もって自由かつ公正な社会の形成に寄与することを使命とすることが明らかにされるに至った。使命規定は,司法書士が行う不動産登記,商業登記,裁判所提出書類作成,簡裁訴訟代理,債務整理,成年後見,遺産承継,民事信託など,多様な業務のすべてに通底するものであり,すなわち司法書士の行う業務のすべては国民の権利擁護に資するものでなければならない。
今,新型コロナウイルスの影響によって,国民の生活様式や社会経済のあり方が大きく変容を迫られ,失業者や経済的困窮者の増加,自死や倒産の増加も懸念されている。
連合会は,これまで以上に社会の期待に応えることのできる法律家団体を目指すため,全国の司法書士が使命を自覚しつつ職責を十全に果たし,倫理の涵養を図り,執務レベルを向上させるための研鑽を積むことができるような体制を強化することをここに宣言する。