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総会決議集
市民の経済生活再生を妨げる裁判所の運用の改善を求める決議
【議案の趣旨】
日本司法書士会連合会は、経済的生活の再生を求める市民の権利保護に資するという司法書士の職責を果たすため、東京地方裁判所破産部が行う、本人による破産申立てを事実上排除するという運用に対し、可及的速やかな改善を求めるとともに、このような運用が他の地方裁判所に波及することに断固反対する。
以上のとおり決議する。
2008年(平成20年)06月20日
日本司法書士会連合会 第70回定時総会【提案の理由】
- 東京地方裁判所破産部(以下「民事20部」という。)では、平成11年から破産管財人の費用を通常管財事件に比べて著しく低廉にした「少額管財手続き」、及び同時廃止事件において、破産申立日の即日に破産手続開始決定を行う「即日面接手続き」を、画一的に代理人申立事件に限るという全国の裁判所の中でも独自の運用を行っている。
その結果、民事20部の自己破産申立事件の本人申立率は、平成11年当時14.18%であったものが、平成18年には0.31%にまで減少している(「民事法情報」254号掲載の東京地方裁判所民事第20部判事小河原寧寄稿文章による。)。これは、全国各地の裁判所における自己破産申立事件における本人申立率と比べてみても異常に低い数値である。 - 形式的には、少額管財及び即日面接手続きを選択しなければ本人による破産申立ても可能であるが、代理人を選任していない債務者には、代理人を選任するよう誘導されていることが、多くの東京司法書士会会員から報告されており、前述の数値とあわせ考えても、民事20部が、破産・免責手続きに事実上代理人選任を必須とする「運用」を行っていることには異論の余地がない。
- この運用により、代理人を選任せずに自分で破産申立てを行おうとする者の手続選択の自由が奪われるだけでなく、経済的困窮にあって、さらに報酬の支払いという経済的負担を強いられるというデメリットを被り、そのデメリットのもとに民事20部が事務処理の効率化というメリットを享受している。裁判所は、国民一人一人が個人として尊重され、その人権を最大限実現していくために存在し、これに奉仕することが本来の職責である。しかしながら、民事20部のこのような運用は、生活の困窮等経済的な状況から代理人を選任することが困難である債務者にとっては、法的救済の拒絶を意味するに等しい。
- 我々司法書士には、市民の権利保護に資するという使命が課されている。この事実を目の当たりにしながら、声を上げることの出来ない市民から目をそむけることは許されない。市民が自らの意思で手続選択について決定することができる権利を取り戻すことが必要である。
- そして、民事20部に限らず今後も事務処理の効率化の名のもとに、司法書士をも含めた法律専門家の関与を事実上義務付けるという手段により、市民の手続選択の自由に対して制約が課され、その経済生活の再生が妨げられようとしたとき、我々司法書士は、どのように行動すべきであろうか。
本来、司法を利用する市民は、自分だけの力で手続きを進めるのか、法律専門家に書類を作成してもらい手続きを進めるのか、法律専門家に代理してもらい手続きを進めるのか、自主的に選択できる権利を持つ。決して第三者の都合により選択させられることがあってはならない。我々は、その決定の自由を尊重し続けなければならないのである。これは、我々が目指すべき「支援型法律家」としての立場からも自覚しなければならないことである。 - 以上のとおり、この問題は決して東京という一地域の問題ではない。我々は、いま市民に対して、東京における問題に対する我々の決意を示し、それと共に自身の使命に対する自覚を再度認識する必要がある。
よって、本議案を提案する。
以上
- 東京地方裁判所破産部(以下「民事20部」という。)では、平成11年から破産管財人の費用を通常管財事件に比べて著しく低廉にした「少額管財手続き」、及び同時廃止事件において、破産申立日の即日に破産手続開始決定を行う「即日面接手続き」を、画一的に代理人申立事件に限るという全国の裁判所の中でも独自の運用を行っている。