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総会決議集
出資法の上限金利引き下げとサラ金広告の規制ならびにヤミ金対策立法を求める決議
【決議の趣旨】
出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(以下「出資法」と称する)が、平成12年6月に改正され、同法の附則に従い本年はその見直しの年にあたる。
当会は、多重債務急増の原因である、サラ金、クレジットの過剰融資、高金利のさらなる規制を求め、以下のとおり決議する。
- 多重債務者の激増等の事情を踏まえ、出資法第5条2項の上限金利を利息制限法の上限である年20%、18%、15%まで直ちに引き下げること。
- 出資法附則に定める日賦貸金業者、電話担保金融の特例金利は、これを認める真の社会的・経済的需要は認められず、かえって脱法行為が横行しているので、直ちに廃止すべきこと。
- マスメディアは、「高利貸し」被害の急増を国民に強く警告するとともに、氾濫する消費者金融等の広告が多重債務被害の拡大を招いている現状を直視し、消費者金融等の広告制限を行うよう努めること。
- ヤミ金横行の被害を防止すべく、ヤミ金対策法の内容において、「出資法の定める制限金利を超える金利での貸付は利息契約のみならず、金銭消費貸借契約も無効であり、不法原因給付として元本の返還義務が無いこと」であることを明記した立法を求める。
上記の目的を達するために、行政、国会、マスメディアなど関係機関に対し具体的な提言を行う。
2003年(平成15年)06月20日
日本司法書士会連合会 第64回定時総会【提案理由】
不景気社会を反映して、消費者金融や信販会社からの借入れを主な破産原因とする個人破産は、加速度的に増加し続けており、平成14年の全国の破産申立件数はついに20万件を突破するような事態となっています。
また、本年は平成12年6月の出資法改正の際に、附則で付けられた同法の見直し時期である3年目にあたります。つまり、本年は消費者金融業者らの上限金利の率を含めて見直しがなされる時期ということです。
利率が下がる方に見直されればよいのですが、消費者金融の業界では、最近のヤミ金業者の出現を平成12年の出資法の改正によって、消費者金融業者らが簡単に貸付ができないようになったからだという、訳の解らない理由で上限利率の引き上げをせっせと政治家等に働きかけているようです。
しかし、司法書士である皆さんはお解かりのはずです。
ヤミ金は犯罪であり、この出現は警察や行政の責任であり、また、これらを罰するための法律がないという点では、立法府の責任ともいえます。ヤミ金の出現と出資法の利率とは全くの無関係なのです。
現在の政策が、規制を緩和することで自由な競争がしやすいように社会構造を改革し、そのためには国民の自己責任を重視するものであっても、1年間で20万件以上の破産申立件数を考えると、私たち司法書士が法律実務家として、きっぱりとしたアピールをしなければ、市民の生活や人権を守ることができないと考えます。
多重債務者の急増の主な原因として、安易な借入れを助長させる広告の存在、既存の借り入れがあるにもかかわらず更に貸付を行うような過剰な融資、利息制限法の規定を大幅に上回る高金利などがあげられます。また、増加し続ける多重債務者は一家心中、夜逃げ、犯罪等の治安の悪化につながり、さらに犯罪業者であるヤミ金業者のターゲットとして、その悲劇は計り知れません。
以上から、多重債務問題解決に向けて、出資法の上限金利の大幅な引き下げを求めるとともに、消費者金融業者等の広告の規制並びに実効性のあるヤミ金対策立法をもとめるために、行政、国会、マスメディアなどの関係機関に対し具体的な提言を行う決議を求めます。