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意見書等
2005年(平成17年)08月31日
法務省民事局民事第二課 御中
筆界特定制度の導入に伴う「不動産登記規則」の改正(案)に対する意見
日本司法書士会連合会
1.意見の概要
土地の筆界の迅速かつ適正な特定を図り、筆界をめぐる紛争の解決等に資するため、筆界特定登記官が、土地の所有権登 記名義人等の申請により、筆界調査委員の意見を踏まえて土地の筆界を特定する「筆界特定制度」は国民の社会生活に有用に機能するものであると考える。この 制度の創設を目的とする不動産登記法等の一部を改正する法律(平成17年法律第29号)(以下「法」という。)の施行にあたり必要な手続的細目事項を定め るため、法務省より公表された不動産登記規則(平成17年法務省令第18号)の一部改正(案)(以下「規則(案)」という。)につき、日本司法書士会連合 会は、大要賛意を表するものである。
とりわけ、筆界特定制度が広く国民等に理解され、多くの者に利用されることを期待しつつ、総論及び各論にわたり、次のとおり、意見を表明するものである。2.総論
(1)広く国民に理解され、多くの者に活用されるよう、その意義及び内容等について周知徹底するため、広報活動を積極的に行うべきである。
(2)筆界特定が事実上、土地所有権に重大な影響を与えるものであることに鑑み、規則(案)に盛り込まれた申請人、関係人等への公告、通知等、意見の提出等の手続保障的規定については最大限に尊重し、その運用をすべきである。
(3) 上記(2)中の意見聴取等の期日においては、特に十分な手続保障的対応がとられるべきであり、当該期日における筆界特定登記官の、いわば「指揮」権は申請 人等の利益を十分に考慮して慎重に行使されるべきである。例えば、当該手続の申請書を当該申請人のために業務上作成した司法書士の当該期日における傍聴に 関しては、これを当然に許可すべきである。
(4)境界確定訴訟と筆界特定制度とはその連携が十分に図られる必要があるとともに、境界確定訴訟と筆界特定手続の当該筆界に関する判断の齟齬につき国民間に混乱が生ずることのないよう、不動産登記実務上一定の公示を行うなどにつき、十分な考慮をすべきである。
(5) 筆界調査委員の任命にあたっては、民間における専門的知見を有する者の活用を積極的に図るべきであり、特に、全国あまねく筆界特定制度を定着させるために も、境界確定訴訟について、代理人として、また訴状等の作成者として携わってきた司法書士についてもその活用を図るべきである。
(6)筆界特定にあたっては、あくまでも現実に現地において筆界を特定することを目標とし、「その位置を特定することができない」ことを理由に「その位置の範囲を特定する」ことは極めて例外的な取り扱いとすべきである。
(7)国民等にとってわかりやすい制度とするため、筆界特定と登記記録及び地図の連携を強化し、筆界特定の際における境界標の確実かつ正確な設置等現地との連携を強化することができる運用を図るべきである。
(8)手数料については、国民が利用し易いものとなるよう、低廉な額にすべきである。
(9)筆界特定制度の積極的活用の見地から、標準処理期間については、通達などの方法によりその基準を明示すべきである。3.各論
(1)規則(案)第209条第1項第4号、第5号について
所有権を有することを証する情報、一筆の土地の一部について所有権を取得したことを証する情報については、通達等でその具体例を明示すべきである。
(2)規則(案)第213条第4項について
「不正な筆界特定の申請」について、通達等でその具体例を明示すべきである。
(3)規則(案)第235条第1項第2号について
筆界特定書はもとより、それ以外の筆界特定手続記録についても、境界確定訴訟において送付嘱託の対象となり、裁判官の心証形成に多大な影響を及ぼすもので あると思われ、また当該訴訟が必ずしも5年以内に提起されるとは限らず、さらに、直接的な関係はないとは言え、所有権の範囲に関する紛争についても一定の 有力な証拠となる可能性が多いと思われるため、その保存期間については、当該手続申請の日から20年とすべきである。
(4)規則(案)第233条について
筆界特定制度と登記制度との連携を図り、その公示性を高めるため、「筆界特定がされた旨」については、少なくとも、「手続番号」及び「当該対象土地以外の対象土地の所在事項」は登記記録に記録されるべきである。
(5)規則(案)第244条について
手続費用については、その基準を通達等で明確にすべきである。