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意見書等
2005年(平成17年)12月26日
法務省民事局参事官室 御中
「会社法施行規則案」等に対する意見書
日本司法書士会連合会
企業法務対策部 商事法務対策WT
登記制度対策本部 商業法人登記WT「会社法施行規則案」等に関する意見
意見のある条文についてのみ、取り上げることとする。
「会社法施行規則案」について
第2条関係
【意見】
定義は、疑義の生じる可能性のある用語に絞るべきである。他方、「役員等」、「銀行等」や「会社役員」など一般用語に近いものは、疑義を生じる可能性があるのであれば、会社法におけるように当該使用箇所で定義すべきである。
【理由】
前 段については、法律で規定されている定義をそのまま下位規範において同様の意味で使用するのは通例であると解されるところ、省令においてもあまりに丁寧に 同様の定義を繰り返すと、法律で定められていない、省令でこそ定義しなければならない用語がその中に埋没してしまい、これを見落とす可能性が高まるからで ある。
後段については、各用語が当該使用箇所で定義されていないと一般人にはわかりにくく、定義規程を念頭においていないと、各条文が正確に読めないこととなりかねない。第14条関係
【意見】
会社法第28条第4号に規定する法務省令で定めるものとして、設立登記申請に要する司法書士報酬も加えるべきである。
【理由】
施行規則案第14条第1号で定める金融機関の手数料は、金融自由化により差が出来てきている。また、発起設立で使用するかどうかは任意である。だとすれば、同様に設立登記申請に要する司法書士報酬についても規定する事ができるものと思われる。第14条関係
【意見】
会社法第28条第4号に規定する法務省令で定めるものとして、印紙税も加えるべきである。
【理由】
会社の設立のときに作成される定款の原本には、印紙税として収入印紙4万円を貼付する必要があるが、これは法定されており、定款の認証の手数料と同様に株 式会社に損害を与えるおそれがないものである。したがって、施行規則案第14条列挙事由に同印紙税も加えるべきである。第41条関係
【意見】
会社設立後の募集株式の発行等に応じて申込みをしようとする者に対しては、発行会社の定款規定を全部開示すべきである。あるいは、施行規則案第17条第3号と同様の規定を置くべきである。
【理由】
会社設立後の募集株式の発行等に応じて申込みをしようとする者は、発行会社の定款の内容に関して知ることを望むのは当然であり、施行規則案第41条各号に列挙されている事項のみならず、定款規定を全部開示すべきである。
そ うでない場合であっても、施行規則案第17条第3号と同様の規定を置くべきである。会社設立後の募集株式の発行等に応じて申込みをしようとする者に対して 通知すべき事項は、募集設立の際に設立時発行株式を引き受ける者の募集に応じて申込みをしようとする者に対して通知すべき事項と平仄を合わせるべきだから である。
発行会社においても、通知すべき事項を見分けるのは煩雑であり、定款規定全部を開示する方が簡明であって、事務処理上も便宜であると思われる。第59条関係
【意見】
補欠役員の任期について、例えば「補欠選任の効力が生じた時点を選任時とみなす」等、なんらかの手当てをすべきである。
【理由】
会社法332条1項において取締役の任期の起算点を選任時としたため、補欠役員の任期についてなんらかの手当てが必要ではないかと解される。第59条関係
【意見】
(1) 同条中「会社役員(執行役を除く。以下この条において同じ)」とするのではなく、単に「役員」とすれば足りる。
(2) 同条第3項における「定款に別段の定めがある場合」について、その許容範囲を明示すべきである。例えば、但書によって、伸長する場合は現任役員の任期満了までとする等明らかにすべきである。
(3) 就任承諾時期に関しても、規定を置くべきである。
【理由】
(1) 会社法第329条第1項において「役員」の定義が置かれており、「執行役を除く」のであれば、単に「役員」と規定すれば足りる。また、そもそも執 行役を含めて「会社役員」の定義を置くのではなく、必要な場合に「役員(執行役を含む。)」と規定するのが簡明であると思料する。
(2) 補欠 役員の選任は、通常臨時株主総会の開催が容易ではない大企業においてニーズがあると思われるが、会社法はすべての株式会社において許容しており、公開会社 でない株式会社においても利用可能である。すると、取締役の任期を10年としている公開会社でない株式会社においては、毎年の定時総会で補欠役員の選任を 繰り返すのは煩雑であり、定款の別段の定めとして可能な限り長期間選任の効力が継続するように規定することになると思われる。とはいえ、無制限に選任の効 力が継続するのは妥当でなく、一定の限度を定める必要があり、「現任役員の任期満了まで」とするのが合理的であると考える。
(3) 補欠役員の 選任時においては、当該補欠役員候補者の事前の承諾があるのが通常であると思われる。しかし、その後の事情変更等により、就任意思がなくなる場合も想定さ れることから、役員が欠けた場合又はこの法律若しくは定款で定めた役員の員数を欠くこととなったときに、即時に就任の効力が生じるものとすべきではなく、 役員が欠けた等の後の就任承諾によって、就任の効力が生じるものとすべきである。第78条関係
【意見】
会社役員の全部が社外役員であることはあり得ないので、所要の見直しをすべきである。
【理由】
委員会設置会社であるときは執行役、また、委員会設置会社でない会社においては取締役のうち少なくとも1名は、業務執行を行うため、会社役員の全員が社外役員であることはあり得ない。「株主総会等に関する法務省令案」について
第10条関係
【意見】
株主総会議事録には、原則として議長及び出席取締役の署名(又は記名押印)を要するものとすべきである。
簡素化措置を採用する場合であっても、公開会社においてのみ認めるものとし、各種法人制度で採用されている議事録署名人の制度を活用すべきである。この場 合、議長及び出席取締役2名(但し、議長を除く。)の署名(又は記名押印)で足りる、という措置が望ましいと考える。
【理由】
確かに、大企業においては、株主総会議事録に取締役全員の署名(又は記名押印)を徴求するのが煩雑という面から省略のニーズがあるかもしれないが、株主総 会議事録は、株主総会の議事の経過の要領及びその結果(総会省令案第10条第3項第2号)を明確にするために作成されるものであり、その内容の真正を担保 する意味でも、原則として議長及び出席取締役の署名(又は記名押印)を要求すべきだと考える。また、取締役会設置会社でない株式会社においては、取締役の 利益相反取引の承認を株主総会が行う(会社法第356条第1項第2号)こと等を考えると、出席取締役の署名(又は記名押印)は、必ずしも意味のないものと は言えないと思われる。
したがって、仮に、署名義務者の範囲を簡素化する措置を採用するとしても、公開会社においてのみ認め、議長及び議事録署名人たる出席取締役2名(但し、議 長を除く。)の署名(又は記名押印)で足りるものとし、公開会社でない株式会社においては従前どおり取扱う、という措置が望ましいと考える。「株式会社の業務の適正を確保する体制に関する法務省令案」について
「株式会社の計算に関する法務省令案」について
第14条関係
【意見】
計算省令案第12条第1項第2号、同第14条第1項第3号、同第15条第1項第2号にある、「募集株式を引き受ける者の募集に係る費用」、「新株予約権の行使に係る費用」、「新株予約権の取得に係る費用」とは、具体的に何を指すのかを明確にすべきである。
【理由】
設立時の資本金の額については計算省令案第10条に規定されており、資本金又は資本準備金の額として計上すべき額から減ずるべき額として具体的に規定され ているが、第12条第1項第2号、第14条第1項第3号、第15条第1項第2号においては、「費用」とだけ規定されており、具体的に控除できる金額が定 まっていない。「費用」と規定されたのは計算省令案第10条と同趣旨であるとの理解でよいのか、それともさらに柔軟に解すべき(例えば証券会社への手数料 を含む等)なのか不明である。第89条関係
【意見】
計算省令案第89条によると、会社法第440条第1項による貸借対照 表等の公告を行う場合についてのみ注記記載を要求しているように読める。仮に会社法第440条第2項による貸借対照表の要旨又は損益計算書の要旨を公告す る場合には注記不要と解しているのであれば、現行商法施行規則と同程度の注記の記載が必要である旨を規定すべきである。
【理由】
条文の構成から行くと、貸借対照表又は損益計算書の要旨を公告する場合として第2章に規定されており、第1章の適用は無いように読める。商法施行規則にお ける貸借対照表又は損益計算書の注記記載は要旨の公告の場合でも一定程度必要であり、それは会社債権者にとって非常に重要な情報であると考えられていたか らであると理解している。会社法においては、最低資本金制度の廃止等債権者保護制度が変わっているため、開示の充実を図ることによって債権者の自己防衛を 期待すべく、現行と同程度の注記の記載が必要である旨を規定すべきであると思われる。「株式会社の監査に関する法務省令案」について
「株式会社の特別清算に関する法務省令案」について
「持分会社に関する法務省令案」について
「組織再編行為に関する法務省令案」について
「電子公告に関する法務省令案」について
第7条関係
【意見】
中断が生じた可能性のある時間が全公告期間中に占める割合を記載又は記録事項とすべきである。
【理由】
電子公告省令案第7条(調査結果通知の方法等)第4号によると、調査結果通知書には、「公告の中断が生じた可能性のある時間の合計」が記載又は記録される が、調査期間全体に対する割合は記載事項とされていない。調査結果通知書からは、中断が生じた可能性のある時間の割合がすぐに判明しないため、その割合が 1/10を超えているかどうかを計算し判定しなければならない。中断が生じた可能性のある時間が全公告期間中にしめる割合を記載又は記録事項とすることを 適切と考える。