-
意見書等
2021年(令和03年)07月27日
法務省民事局商事課 御中
「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規程案」に対する意見
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳当連合会は,標記について,次のとおり意見を申し述べる。
1.第2条第2号
【意見】
第2条第2号に規定されている「過去の一定の時点(本条の申出をする日前1月以内の日に限る。)における申出会社の実質的支配者」のうち,「過去の一定の時点」は「過去の一定の日」とすべきである。
【理由】
本条本号に規定される「過去の一定の時点」は,括弧書にあるとおり,申出をする日前1月以内の日に限るとされており,「日」をもって特定することが想定されていると考えられる。また,例えば,会社法第124条に基準日の規定があり,一定の「日」を定めて,当該日に株主名簿に記載され,又は記録されている株主を,権利を行使することができる者と定めることができるとされており,一定の「時点」を定めるとはされていない。
よって,本規程においても,「過去の一定の時点」ではなく,「過去の一定の日」と規定するのが相当であると思料する。
2.第4条第1項第2号イ
【意見】
申出会社が申出に際して添付しなければならない書面として,「申出をする日における株主名簿の写し」とあるが,申出をする日におけるものに限定する必要はない。
【理由】
第2条にあるとおり,申出をするのは,「過去の一定の時点(日)」における申出会社の実質的支配者であり,株主名簿については申出の日におけるものに限定する必要はないと考える。例えば,株主名簿管理人を設置している株式会社等においては,申出の日における株主名簿を準備することが容易でない場合もあるであろうし,例えば,第2条第2号に規定される「過去の一定の時点(日)」前後から申出の日までの株主名簿であれば,許容するのが相当であると思料する。
3.第4条第1項第2号
【意見】
申出会社が申出に際して添付しなければならない書面として,イ~ハの3つが規定されているが,ニとして,その他の同様の情報が記載されている書面(あるいは情報)の添付を許容する規定を設けるべきである。
【理由】
イ~ハについては,申出会社の実質的支配者が誰であるのかを確認するための資料であると考えるが,イ~ハ以外の書面(情報)であっても,それらと同等の内容が記載されているものであれば,許容されるべきである。例えば,公開会社の事業報告には「株式に関する事項」(会社法施行規則第119条,第122条)の記載が必要であるが,法令により作成が義務付けられている書類であり,住所の記載は法定されていないものの,その記載から,他の書類と同様,所有株式数等が確認できることから,当該書類の該当部分の抜粋の写しに代表者が記名したもの等も認めるのが相当であると思料する。
4.第4条第2項第1号
【意見】
実質的支配者が上場企業等であることも想定されるが,その場合の添付書面も規定すべきである。
【理由】
例えば,犯罪による収益の移転防止に関する法律施行令第14条第5号の規定により上場企業及びその子会社は自然人とみなされ,実質的支配者として申出書に記載される場合も想定されるが,その場合の添付書面についても規定するのが相当であると思料する。
5.オンラインでの申出への対応
【意見】
申出については,電子情報処理組織(以下「オンライン」という。)や,添付すべき情報を電磁的記録により提供することを認めるべきである。
【理由】
申出については,商業登記の申請とあわせて行うケースも想定され,当該申請をオンラインで申請したにもかかわらず,前記申出は書面に限られるのであれば,利用者の利便性の観点からも問題であり,商業登記のオンライン申請の利用率の向上の観点からも適切ではないものと思料する。
また,添付する資料等については,書面であることを前提として規定されているが,オンラインのほか,申出書を書面で提出した場合であっても,添付する資料等については,電磁的記録により提供することも認めるべきであり,例えば,第6条において,申出書(代理人による場合にあっては,代理権限証書)に申出会社の代表者が商業登記所に提出している印鑑が押印されている場合を除き,本人確認書面の添付を要する旨が規定されているが,代理人による場合に,代理権限証明情報を電磁的記録で作成し,当該情報に商業登記電子証明書や公的個人認証電子証明書等により電子署名をした情報を電磁的記録により提供すること等も許容するのが相当であると思料する。
「商業登記所における実質的支配者情報一覧の保管等に関する規程案」に対する意見