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意見書等
2020年(令和02年)12月23日
法務省民事局商事課 御中
「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見書
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
標記省令案に関して,当連合会は,次のとおり意見を申し述べる。
改正規則案第9条第1項第2号関係
【意見】改正規則案第9条第1項第2号のうち,傍線部分「当該後見人である法人の代表者」を「当該代表者」とするべきである。
【理由】他の項との平仄を図るため。
改正規則案第9条第1項第4号関係,第5項第4号及び第5号関係
【意見】改正規則案第9条第1項第4号,第5項第4号及び第5号のうち,傍線部分「当該会社の代表者」を「当該代表者」とするべきである。
【理由】他の項との平仄を図るため。
改正規則案第21条第2項関係
【意見】改正案のように改正すべきではない。逆に,利害関係人の本人確認の適正を確保する観点から,いわゆる実印を押印して,市町村長の作成した証明書等を添付させることとするのが相当である。
【理由】附属書類の閲覧請求をすることができるのは,利害関係人に限られ,また利害関係を有する部分に限って閲覧することが認められるものである。この点,平成28年改正の際に,取扱いの厳格化が図られた経緯がある。したがって,利害関係人の本人確認の厳格性の観点から,いわゆる実印を押印して,市町村長の作成した証明書等を添付させることとするのが相当である。
改正規則案第52条の2関係
【意見】譲渡人が会社である場合には,登記事項証明書を添付するものとすべきである。
【理由】譲渡人が会社である場合には,従来,承諾書のほか,譲渡人の代表者の資格を証する書面及び登記所が作成した印鑑証明書を添付する取扱い(商業登記実務研究会編「新版商業登記法逐条解説」(日本加除出版)142頁)であったものであり,改正後においても,登記事項証明書を添付するものとすべきである。そのうえで,法第19条の3の規定により,申請書に会社法人等番号を記載した場合には,添付することを要しない取扱いとするべきである。
改正規則案第61条第4項関係
【意見】成年後見人又は保佐人が,法人の場合における取扱いを加えるべきである。また,保佐人が同意をした場合の取扱いを加えるべきである。
【理由】成年後見人又は保佐人は,法人であることも考えられる。この場合の取扱いについて加えるべきである。
被保佐人が設立時取締役に就任する場合には,被保佐人が自ら就任を承諾し,保佐人の同意を得なければならないものとされている(新会社法第331条の2第2項)。改正案のように,保佐人が本人に代わって就任を承諾するというのは,保佐人が民法第876条の4第1項の代理権を付与する旨の審判に基づき被保佐人に代わって就任の承諾をする場合であって,極めて例外的な場合であると考えられる。被保佐人が自ら就任を承諾し,保佐人の同意を得た場合には,保佐人の同意書に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならないことになるので,所要の修正をすべきである。
改正規則案第61条第8項関係
【意見】成年被後見人本人が辞任の意思表示をする場合の対応を加えるべきである。
【理由】代表取締役等が成年被後見人であって,この者が辞任するときは,成年被後見人又は成年後見人のいずれも辞任の意思表示をすることができると解されている。成年後見人が本人に代わって辞任の意思表示をする場合には,改正案のとおりであるが,成年被後見人本人が辞任の意思表示をする場合には,辞任を証する書面に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付することができない場合があるという問題がある。
なお,成年被後見人本人がした辞任の意思表示は取り消すことができるため,このままでは法第24条第9号の規定により登記申請が却下されることとなるものと思われるが,成年後見人が追認(民法第122条)したときは,同号の却下事由に該当しない。
上記のとおり,成年被後見人について市町村長の作成した印鑑の証明書の交付を受けることができない場合があることを併せて考えると,この場合においては,辞任を証する書面に加えて成年後見人が同意をしたことを証する書面を添付させ,成年後見人が同意を証する書面に押印した印鑑について市町村長の作成した印鑑証明書を添付させるなどの対応が考えられる。
改正規則案第102条第6項削除関係
【意見】規則第61条第6項の適用場面では規則第102条第3項各号に掲げる電子証明書の電子署名等に限られる取扱い(リモート署名やクラウド型電子署名を利用することはできない。)であることを規則上明らかにすべきである。
【理由】規則第102条第5項第2号により電子署名をする場合には,添付書面情報にいわゆるリモート署名やクラウド型電子署名をすることが可能である取扱いであるが,規則第61条第6項の適用場面では規則第102条第3項各号に掲げる電子証明書の電子署名等に限られる取扱い(リモート署名やクラウド型電子署名を利用することはできない。)であることが明らかではないので,この点を規則上明らかにすべきである。
20201223 「商業登記規則等の一部を改正する省令案」に関する意見書