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意見書等
2019年(令和元年)12月25日
経済産業省商務情報政策局 商務・サービスグループ商取引監督課 御中
「産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会 中間整理~テクノロジー社会における割賦販売法制のあり方~」に対する意見
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会が令和元年5月29日に公表した中間整理に対し,当連合会は次のとおり意見する。
第1 意見の趣旨
極度額10万円以下の少額・低リスクサービスに信用情報を使用する義務がないとする緩和措置に反対する。
第2 意見の理由
1 割賦販売法小委員会では,極度額10万円以下の少額・低リスクサービス(以下「少額・低リスクサービス」という。)に信用情報機関の使用及び登録義務を免除する緩和措置を行うとしている。
2 しかしながら信用情報を一切使用しないのでは,多重債務状態に陥ることへの防止を担保する制度設計とはいえない。
3 現行の規定でも極度額30万円以下の場合には業者にコストの低減等の緩和措置が図られており,事業者に著しい不都合や負担が生じていない。
4 信用情報機関利用におけるコスト面の負担軽減を重視するなら,使用,登録するデータを最低限のものにすること等で対応するべきであり,そもそも信用情報を使用しないとする点に反対する。
5 また,仮にこの中間整理の方向性を維持する場合は,少額・低リスクサービスを提供する事業者に個人が多重債務状態に陥ることのないよう防止義務を課し,これに違反した場合は厳しい罰則を課すべきである。これにより事業者の信用情報の利用,登録を促し,多重債務状態に陥ることへの防止に資することとなる。なお,多重債務状態へ陥ることへの防止義務違反に該当する基準は,省令あるいはガイドライン等で,より具体的に定めるべきである。
6 そして今回の中間報告では,1つの少額・低リスクサービスを提供する事業者が一個人に対し,限度額10万円以下の契約を複数契約した場合の取り扱いが明らかとなっていない。複数契約した場合には極度額を合算して判断すべき事を明確にすべきである。
7 さらに複数の少額・低リスクサービスを提供する事業者が一個人に対して契約をすることができることも問題である。例え極度額10万円だとしても,10社と契約をすれば100万円となる。このような状態を発生させないためには,信用情報の活用が不可欠であり,コスト削減を考慮した新たな制度を設けるべきである。
例えば,契約数の上限や契約金額への規制等の措置を講ずるべきと考える。
8 特に少額・低リスクサービスの契約が何社あるのか,その合計極度額等は融資を行う際の最重要事項であり,既存の信用情報を使用しない特別な緩和措置を講じるとしても,新たに別途情報登録制度を設け必要最低限の情報を管理,利用するべきである。既存極度額及び契約件数の情報が得られれば,多重債務状態に陥ることへの防止効果はあり,リアルタイムに残高を反映させる必要性も低いと思われ,情報利用コストもある程度軽減できるため,そのような措置を講じるべきである。
「産業構造審議会 商務流通情報分科会 割賦販売小委員会 中間整理~テクノロジー社会における割賦販売法制のあり方~」に対する意見