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意見書等
2003年(平成15年)08月04日
司法制度改革推進本部事務局 御中
「行政訴訟制度の見直しについて」に対する意見
日本司法書士会連合会
裁判事務推進委員会平成15年6月30日付に、貴事務局からご依頼のありました標記の件につきまして、以下のとおり、一部の事項につき、意見を提出いたします。
はじめに
わが国の行政訴訟の現状は、原告の勝訴率が極端に低いばかりか、種々の理由により実質的な審理すらなされないことが「機能不全」と指摘されている。行政訴 訟は、国民にとって「行政」に対し主権者としての権利行使をする場であり、かかる手続の利便性が最大限確保されなければならない。行政訴訟を国民に利用し やすく適正に機能させることは、民主主義の根幹に関わることであり、かかる制度の抜本的改革が早急に要請されるところである。
また、行政訴訟は手続きの改革のみによっては、その機能自体が改善されるとは考えられないので、法改正後の運用を見据えつつ、その状況を踏まえて、より良い改善方策に向けた議論を継続すべきである。前提として
今回の検討事項にはあげられていないが、行政訴訟の運用に関してまず述べておかねばならないことがある。現在のいわゆる「訴訟検事」の制度は改めるべきで ある。行政訴訟の被告代理人が、同僚の裁判官出身という構図は、市民から見ると著しく公平性を欠き、行政に偏った判断をしていると捉えられても弁明の余地 がない。
この際、行政も民間の法律家を代理人として利用すべきである。以下、検討事項に対して、利用者にとって利便性のよい行政訴訟の実現を念頭に置き、賛否を述べる。
第1 基本的な見直しの考え方-権利利益の実効的救済の保障
【意見】枠内に示された意見に賛成である。
第2 具体的な見直しの考え方
1 行政訴訟を利用しやすくするための見直し
(1)被告適格者の見直し
【意見】枠内に示された意見に賛成である。
(2)行政訴訟の管轄裁判所の拡大
【意見】 市民が訴え提起しやすい方法をとるべきである。したがって、B案に賛成する。
被告が公共団体の場合も同様である。
また、訴えの提起の受付業務のみを各簡易裁判所において行えるようなシステムも考えるべきである。(3)出訴期間等の教示
【意見】 教示義務の対象となる行為は、限定すべきではない。
教示の相手方については、請求のあった利害関係人も含めるものとする。
出訴期間は、教示がなされなかった場合は、提起できることを知ったときから経過するものとする。2 審理を充実・迅速化させるための方策の整備
ア 処分又は裁決に関する理由の説明
【意見】故意に虚偽の事実を述べた場合への罰則を規定すべきである。
イ 処分又は裁決に関する記録等の提出
(ア) 【意見】文書提出命令の申立ての特則と位置付けるべきである。
(イ) 【意見】文書の特定は、情報公開法に順ずる程度でよいものとする。
(ウ) 【意見】除外文書は設けず、裁判所の判断により、記録の公開を制限できるものとする。
(エ) *意見保留
(オ) *意見保留3 本案判決前における仮の救済の制度の整備
ア 執行停止の要件の緩和
【意見】 執行停止の要件は緩和すべきである。
処分が執行された場合に生じる損害が重大なときには、執行停止の要件の有無を厳格に審理することなく、いったん執行を停止して、緊急にその要件を審理する暫定的な執行停止制度を導入すべきである。
イ 執行停止決定に対する不服申立ての在り方
*意見保留
ウ 公権力の行使に当たる行為についての執行停止以外の仮の救済
*意見保留
エ 行政事件訴訟法第44条の取扱い
【意見】廃止すべきである。4 権利利益の救済を実効的に保障するための多様な救済
(1)行政の作為の給付(義務付け)を求める訴え
ア 【意見】C案に賛成する。
イ *意見保留
ウ 【意見】C案に賛成する。
エ 【意見】A案に賛成する。(2)行政の行為の差止めを求める訴え
ア 【意見】限定すべきでない
イ *意見保留
ウ 【意見】E案に賛成する。(3)確認の訴え
*意見保留5 取消訴訟の対象、排他性、出訴期間
(1)行政立法、行政計画、通達、行政指導などへの取消訴訟の対象の拡大
【意見】 紛争の成熟性にかかわらず行政立法、行政計画などを取消訴訟の対象とすべきである。
(2)取消訴訟の排他性等の見直し、行政決定の違法確認訴訟の創設
【意見】A案に賛成する。
(3)裁判所が判決で必要な是正措置を命ずる考え方
【意見】 枠内の意見に賛成する。救済方法の選択を原告にゆだねることによるリスクを市民に負わせるべきではない。
(4)取消訴訟の排他性の拡大解釈の防止
【意見】枠内の意見に賛成する。
(5)出訴期間の延長
【意見】 A案に賛成する。
また、アの指摘が妥当であると考える。6 原告適格、自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限、団体訴訟
(1)原告適格の拡大
【意見】A案に賛成する。
(2)自己の法律上の利益に関係のない違法の主張制限の規定の削除
【意見】削除すべきと考える。
(3)団体訴訟の導入
【意見】行政事件訴訟に一般的な規定を置き、B案に賛成する。
7 審理手続・証明責任・判決、裁量の審査
(1)主張・立証責任を行政に負担させること
【意見】 枠内の意見に賛成する。行政の費用で事実の調査をする制度も設けるべきである。
(2)処分の理由等の変更の制限
【意見】枠内の意見に賛成する。
(3)事情判決の制限
【意見】枠内の意見に賛成する。
(4)裁量の審査の充実
【意見】B案に賛成する。
8 費用の負担、行政不服審査法等の他の法令との関係・個別法上の課題
(1)訴え提起の手数料の軽減
【意見】A案に賛成する。
(2)弁護士報酬の敗訴者負担の取扱い
【意見】 B案に賛成する。
なお、司法書士の書面作成費用についても同様の扱いが必要であると考える。事実、法律扶助制度においても、書面作成援助の費用が認められており、これを弁護士報酬と別に考える必然性はない。(3)不服審査前置による制約の緩和
【意見】C案に賛成する。
9 行政訴訟の目的・行政の違法性を確保するための訴訟
(1)行政訴訟の目的規定の新設
【意見】枠内の意見に賛成する。
(2)国の公金の支出の違法性を確保するための納税者訴訟の創設
【意見】枠内の意見に賛成する。