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お知らせ
2021年(令和03年)10月13日
日本司法書士会連合会小澤吉徳会長が、上川法務大臣と対談を行いました。
日本司法書士会連合会小澤吉徳会長が、上川法務大臣と対談を行いました。
今回の対談は、「所有者不明土地問題」をテーマにしたもので、所有者不明土地問題の解決に向けた法務省及び日本司法書士会連合会の取組や今後の展望などについて話し合われました。
なお、役職名は対談当時のものです。
【上川法務大臣】それでは、始めましょう。早速ですが、まず、私から、相続登記の現状と課題を簡単に申し上げます。日本では、年間100万件を超える不動産の相続登記がされています。親御さんからの財産の相続も、不動産の管理も、多くの皆さんに関わりがあります。また、安全・安心に暮らしていくためには、土地が誰のものなのか、ちゃんと管理されているかは、とても関心がありますよね。
そして、土地の適切な管理のためには、早期に遺産分割がされ、その相続登記がしっかりとされることが極めて重要であると思いますが、残念ながらうまく進まず、平成29年に行われた推計では、我が国に、九州地方に相当する広さの所有者不明土地が存在し、少子高齢化等を背景にして今後も広がっていくといった指摘がされるに至りました。
その背景には、相続登記の申請が義務ではなく、申請しなくても不利益を被ることが少ないと考えられてきたことや、都市部への人口移動等により、地方を中心に、土地を利用したいというニーズも低下してきたことなどがあると思われます。また、都市部では、住所変更登記がされていないことが所有者不明土地の発生原因として多いといった地域的な特徴もあるとされています。
この点に関して、日本司法書士会連合会としても、これまでにずいぶん熱心に取り組んでこられましたよね。
【小澤会長】
はい。ありがとうございます。当連合会におきましては、かねてから、空き家・所有者不明土地問題の解決は、まさに司法書士に課せられた重大な使命であるという認識のもと、様々な事業を展開してまいりました。
その一つが、司法書士会や全国8つに設けたブロック会とのコラボレーションによる相続登記促進事業であります。著名人を起用した各種広報素材の作成や、イベントなどの広報の充実、そして、全国統一のフリーダイヤル(遺産のなやみに 0120 13 7832)の運用開始であります。国民の皆様からの相続登記に関する相談をお受けし、必要な方には、最寄りの司法書士を紹介させていただいております。
その他にも、毎年2月に「相続登記はお済みですか月間」と題して全国において相続登記の促進活動をしております。
【上川法務大臣】
東日本大震災の際に、持ち主の分からない土地の存在が被災地の復旧・復興事業の妨げとなったことが、この問題に取り組んでいく大きなきっかけでしたよね。
法務省でも、日本司法書士会連合会とも連携して、問題意識を強く持って取り組んできました。私も、登記官が、法定相続人の一覧図を確認して、証明書を発行し、相続に関連する様々な手続にご利用いただく制度(法定相続情報証明制度)の創設に関与したり、3回にわたる法務大臣の2回目の在任中には、長期間相続登記がされずに放置されてきた土地の相続人となり得る方を探索する制度(長期相続登記等未了土地解消作業)を創設するとともに、一定の相続登記に係る登録免許税の免税措置を講ずるなど、所有者不明土地問題に取り組んできました。
そして、今年4月には、所有者不明土地の解消に向けて民法・不動産登記法の改正がされました。
令和5年までには所有者不明土地の管理に特化した所有者不明土地管理制度などが開始することになり、司法書士を始めとした専門家の活用が期待されます。そして、令和6年までには、いよいよ相続登記の申請が義務付けられることになります。
私は、この問題については、待ったなしの状態であり、国も国民も皆で役割と責任を持って対応する必要があると考えてきました。不動産登記情報は、国土の基盤情報です。登記を見ても20パーセント以上の土地が持ち主やその連絡先が分からないという現状を着実に解消していかなければなりません。不動産登記情報を中核に置きながら、デジタル化社会における重要な情報インフラとして、行政機関や民間においてこれを速やかに活用していただくことにより、民間の土地取引を活性化させるとともに、更なる国土の有効活用につながる政策を推進することができるようになります。これからは、国民の皆様の理解と協力を一層いただきながら、所有者不明土地を、「新たに作らない」ようにするとともに、今ある九州地方に相当する広さの所有者不明土地を「減らしていく」ことが必要です。
そのためには、所有者不明土地の解消という目標を関係者の方々としっかり共有した上で、全国各地の実情を踏まえて、課題を分析して様々な取組を実行しながら、そのオペレーションを踏まえてPDCAサイクルを回し、着実に成果を挙げていくことが重要です。日本司法書士会連合会を始め関係者の方々とも手を携えて、関連する施策にしっかり横串を刺し、目標達成に向けて確かなビジョンを描いていきたいと考えています。
改正法の成立には、日本司法書士会連合会にも様々な協力をいただきましたが、今後の施行に向けて、どのような課題があり、これに対してどのような取組を進めるお考えでしょうか。
【小澤会長】相続登記の申請を義務化したことや、遺産分割に関し、具体的相続分の主張についての期間制限を設けたことなど、今般の民法・不動産登記法の改正の内容は、早期の権利関係の確定に資するものであり、所有者不明土地の発生予防や解消に極めて有意義なものと高く評価しております。
もっとも、身近なくらしの中の法律家として国民の皆様から色々な相談を受けるなどしている中で、今回の法改正の内容についての周知が行き届いているかというと、まだまだ課題があるように思われます。新しい手続の分かりやすい運用や、相続登記・遺産分割協議を促進するための一層のインセンティブ措置など、政府を挙げた更なる取組を期待しています。
当連合会としても、これまでの取組に加えて、今般の法改正の内容などについての周知啓発活動に、さらに力を入れていきたいと考えており、そういった点でも、是非、今回のような法務省との連携をより一層強めていければと考えております。
【上川法務大臣】
【トウキツネ】
はじめまして、トウキツネです。
よろしくお願いコン! 今回の法改正は、国民に広く影響を及ぼすものですので、その周知啓発については、正しくまた十分に知っていただけるよう、しっかりと進め、所有者不明土地の解消という目標達成につなげていかなければなりません。
一例をあげると、「相続登記の申請の義務化」は、相続登記をしないと罰せられるから、大変な思いをしてでもやってもらおうという制度ではありません。相続登記を申請しないことに正当な理由がある場合には罰則は適用されませんし、簡便に義務を履行することができる手段として相続人申告登記という新たな登記を創設しています。こういった新たな制度の姿をパッケージでご理解いただきたいと思います。
新たな登記手続においては、オンラインの利用も含め、国民の皆様にとって分かりやすい、利便性の高い運用も実現するよう、実務的な準備も、司法書士会を含めて関係者のお声を聴きながら、しっかりと進めてまいります。
法務省としても、多岐にわたる見直しの内容を項目ごとにより詳細に紹介した資料をホームページに公表しましたが、さらに、一般の方向けのポスターやパンフレットを作製し、全国に配布するといった取組を予定しています。また、司法書士を始めとした専門家の方々と連携することも重要になります。
特に、今回の法改正については、専門家の方々などをターゲットにした専門的な周知活動にとどまらず、一般の国民の皆様に向けたわかりやすい周知も重要です。
その第一歩として、法務省でも、「トウキツネ」という不動産登記推進キャラクターを新たに採用し、既にホームページにも登場させています。実は、このキャラクターは、民事局の職員がデザインしたものなんですよ。
【小澤会長】
トウキツネ、可愛いですね。是非、司法書士会の広報資料にも登場していただきたいと思います。
今回創設された様々な新制度について、しっかりと実効性のあるものとしていくことができるかは、今後施行までの間の周知活動が極めて重要ではないでしょうか。そうした観点から見ても、とても良い取組だと思いました。
【上川法務大臣】
トウキツネ、是非よろしくお願いします。
さて、所有者不明土地への対策は、今般の民事基本法制の見直しによって終わるものではなく、今後も続いていくことになります。
私は、所有者不明土地問題が、多くの国民の方々にとって、今なお縁遠いテーマであるように思われます。
国民の皆様や専門家の方々が、この問題を「自分の問題」ととらえ、家族、親戚、地域、職場、そういった様々な場面で、相続登記や土地・建物の管理の必要性について、確かな共通理解が育っていくことがとても重要だと思っています。
この問題を一刻も早く解決し、我が国の国土をしっかりと有効活用することができるようにするため、私も、これから様々な形で貢献していきたいと思っています。
新しい制度のスタート、定着に向けて、法務省としても、引き続きしっかり取り組んでまいります。
【小澤会長】
よろしくお願いします。本日はありがとうございました。司法書士会としては、まずもって、相続登記の義務化に伴い国民から寄せられる期待に応えていきたいと考えています。そして、それは、ただ単に法定相続分による相続登記や相続人申告登記を行えばいいのではなく、将来に備えての、早期の権利関係の確定という視点から「遺産分割の促進」という重要な問題を常に意識して実務にあたるべきと考えています。
一方、空き家・所有者不明土地の利用促進という視点でみれば、所有者が不明であったり適切な管理がされていない土地・建物を対象に新たな財産管理制度が創設されます。また、所在不明共有者の不動産の共有持分を取得・譲渡することができる裁判手続も創設されます。司法書士は、法律事務の専門家として、財産管理人の担い手となることなど、これらの手続における役割をしっかりと果たすほか、新たに創設される土地所有権の国庫への帰属の承認手続における役割についても十全に果たしてまいる所存であります。
【上川法務大臣】
所有者不明土地問題の解決に向けて、日本司法書士会連合会の今後果たす役割にも期待をしていきたいと考えています。これからも、所有者不明土地問題の解決に向けて、しっかりと歩みを進めてまいりましょう。本日は、ありがとうございました。