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月報司法書士
月報司法書士 2002年11月号(No.369)を一括ダウンロード
※掲載原稿の一部をホームページ上で公開しております。
フォトエッセー 小繋事件―入会権闘争―
特集 「法教育」の新しい取り組み
新しい法教育の視点と展望/筑波大学教授 江口 勇治
法教育をもっと身近なものに/初等中等教育推進委員会委員 隅防 俊幸
高等学校における法教育の実践/広島市舟入高等学校教諭 河村 新吾
初等中等教育における日司連の取り組み
/初等中等教育推進委員会 委員長 高橋 文郎、副委員長 竹村 秀博日本版CAPプログラムにおける「権利」の定義をめぐって/くまもと子どもの人権テーブル代表 砂川 真澄 論考
論考
司法過疎克服に取り組む/愛知学泉大学専任講師 山上 博信
講座
司法書士マネジメント講座 税務編 第8回/税理士 徳田 匡泰
essay
大出良和の深謀無遠慮・Ⅱ 第2回/九州大学大学院教授 大出 良知
スポーツ楽観主義 第9回/茂木 宏子 「箱根スポーツへのレクイエム」
リーガルサポートニュース
シネマ・ド・サエコ
インフォメーション(パズル&プレゼント)
綱紀事案の公表 60・61
司法書士名簿登録等の公告
資料「人事訴訟手続法の見直し等に関する要綱中間試案」に対する意見
フォトエッセー 司法の風景を訪ねて 第26回 小繋事件―入会権闘争―
入会権について民法は僅か2か条(263条、294条)を置くのみである。しかもその規定する内容は「各地方ノ慣習ニ従フ」という包括的な規定である。
盛岡から北へ約50㎞奥羽街道(旧国道4号)沿いの岩手県二戸郡一戸町小繋。小繋山と総称される山が家々を軒先まで囲む。小繋事件とは、この地で同部落入会の山林原野をめぐり闘われた、祖父母、父母、子、孫の三代、四代にわたる訴訟事件である。
事件の原因は、明治期の地租改正、山林原野官民有区分事業に遡る。明治10年部落の入会山であった小繋山は、民有地として大部分が地元の有力者名義で地券が交付された。その後所有権は移転したが、入会権はその性質上何の影響も受けず、小繋の部落住民は入会権という概念さえ持たなかった。大正4年、小繋部落は全焼。住民が自宅再建のため入会山から用材を伐りはじめたところ盗伐で逮捕された。この事件が発端となり、住民は官憲の弾圧に抵抗しながら入会利用を続け、大正6年から法廷闘争が始まった(第一次小繋訴訟)。
昭和21年第二次小繋訴訟開始、昭和30年小繋刑事事件と続く訴訟事件で、住民達は「権利は自分の手でしか守れない」ことを学んだ。「入会権はある、しかし裁判では負ける」都立大教授の職を辞し小繋のために弁護士として支援された戒能通孝著『小繋事件』(岩波新書)には、この間の事情が詳しく記されている。(藤田貴子)