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会長声明集
2011年(平成23年)07月15日
被災者の生活保護の適用に不平等が生じないことを求める会長談話
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司
まさに,未曾有としか言いようのない東日本大震災を発端として,東京電力福島第一原子力発電所及び同第二原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)が発生しました。東日本大震災の災害と原発事故による被害によって,突如として,多数の方が家族や大切な人を亡くし,そして住居も仕事も失いました。そのうえ,被災者や被害者の方は,生活基盤が失われたまま,避難所での生活を余儀なくされています。
これに対して国は,生活保護に関してだけでも,「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活保護の取扱いについて」(平成23年3月17日社援保発0317第1号)を皮切りに,「同(その2)」(3月29日社援保第0329第1号),「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」(5月2日社援保発0502第2号)と通知を発して,被災者の特別な事情に配慮し,必要な保護費を遺漏なく支給することを確認し,義援金等の収入認定について指針を定めるなど,その役割を果たされていることに敬意を表します。
ところが,一部報道や司法書士会会員からの報告によると,実施責任がある各地の福祉事務所では,少なからず誤った,または,必ずしも被災者の特別な事情を配慮したとは言えない運用がなされています。
①車を保有する要保護者に対して,生活保護の申請を認めないと説明がなされた。②南相馬市など複数の市で,原発事故にともなう仮払金補償金を収入として認定して生活保護を廃止した。③避難所で生活保護を申請したところ,生活扶助の内,主に食費等の費用となる一類について75%,光熱費等の費用となる二類について20%を控除した。
言うまでもなく,生活保護は,生存権保障を具体化させた法律です。実施責任は各福祉事務所にあるにせよ,運用によって生存権保障を具体化した生活保護法の適用範囲を狭めることはできず,かつ,全国的な不均衡が生じないよう最大限配慮する必要があります。
東日本大震災及び原発事故は,被害の甚大さは言うに及ばず,広域災害であり,かつすべての都道府県に避難されている方がいること,さらには,仮設住宅の建設が遅々として進まず未だ避難所での生活を余儀なくされている方が多数いるなど,特別な事情があります。生活保護費の受給にあたっては,①生活保護費に不足が生じないよう遺漏なく支給されること,②避難している場所によって保護の開始・廃止に不平等が生じないよう配慮することが徹底されるよう,国がリーダーシップを発揮することを求めます。