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会長声明集
2011年(平成23年)11月16日
東京電力に対する原子力損害賠償請求についての会長声明
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司
原子力損害賠償支援機構は、本年10月31日より原子力損害賠償に関する相談窓口を開設した。実施する事業の内容は、専門家チームによる巡回相談と同機構本部における電話による情報提供である。
東京電力から被害者に対して送付された損害補償金請求書及び説明書に対しては、その内容及び分量について、数多くの指摘がなされ、再三にわたり修正され ている。指摘されることにより書類の修正は行われたが、東京電力がこの度の原発事故の加害者という立場を考えれば、記入方法の説明を受けたとしても、東京電力から送られてきた書類に素直に記入し、請求をする気にならない被害者が多いのは当然のことである。そのため、10月31日付の新聞報道によれば、請求書の提出があったのは1万4000件であり、送付した請求書の20%に留まっている。
前記の原子力損害賠償支援機構も法律により国が設立した機関であり、本件においては国も賠償義務を負うという点においては東京電力と同様の立場である。 被害者の心理からすれば、東京電力と同様にこの機構が実施する相談や情報提供の内容をそのまま信じてよいものかとの疑いを持つことも止むを得ない。
今、必要なのは、被害者が安心して請求書に記入し、早期に提出するための相談であり、情報提供である。そのためには、相談等を行う主体が通常の場合より重要な意味を持ち、相談等を行う上でのスタンスの明確化が信頼を得るための絶対条件となる。
司法書士及び司法書士会は、東京電力や国とは異なる立場で、目の前の被害者の権利を擁護する専門家としてのスタンスを堅持し、被害者の本当に知りたいことを伝えるために相談活動を実施していく覚悟であり、当連合会は、このような活動を支援していく所存である。
当連合会が行う「市民救援活動」の理念は、何よりも被害者の方が早期に自立した生活を回復することを願うものである。