-
会長声明集
2012年(平成24年)07月04日
生活保護法の改正・生活保護基準の切下げに反対する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 細 田 長 司
近時、生活保護制度をめぐり様々な議論や報道がなされ、政府も生活保護制度の見直しを公言するなど、市民の最低限度の生活を守るべき生活保護制度のあり方そのものが問題となっている。
しかし、これらの論調は、生活保護制度について、十分な調査・研究もなく、また生活保護利用者や市民の声を聴取することなく、法改正や基準引下げの方向に進もうとするものであり、冷静な議論と報道がなされるべきである。
本来、文化的な最低限度の生活を保障した生存権は、憲法に保障された権利であり、国家は憲法によって個々の国民に付与された生存権を守るべき義務を負 う。また、生存権の内容を具現化した生活保護法は、経済的・社会的に弱い立場にある市民の生活を守る最後のセーフティネットとして、今後も機能しなければ ならない。
そして、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動しており、生 活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している市民の生活レベルを低下させるだけでなく、低所得者全般の生活にも大きな影響を及ぼす重大な問題である。
司法書士は、相談、生活保護申請の同行、金銭管理の必要な者に対する家計管理などの活動を通じて、昨今の経済情勢による労働環境の悪化、DV・虐待など の家族関係の問題、高齢化・家庭環境の変化による単身世帯の増加、無年金などの社会保障制度の不備に基づく生活苦などを背景に、市民の命を守る生活保護制 度が今後ますます重要になることを実感している。
当連合会は、政府及び国会に対し、生活保護利用者や市民の声を十分に聴取し、慎重な検討を行うことを強く求めるとともに、安易かつ拙速な生活保護法の改正・保護基準の切下げには断固として反対するものである。以上