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会長声明集
2024年(令和06年)05月02日
生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律の成立にあたって(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 小 澤 吉 徳
令和6年4月17日、生活困窮者自立支援法等の一部を改正する法律が成立した。本法は、子どもの貧困対策、住居確保支援や、いわゆる貧困ビジネス対策等の強化を図り、経済的困窮や社会的孤立等により支援を必要とする者に対し、生活困窮者自立支援制度や生活保護制度等が着実にその役割と機能を果たすことができるよう、諸制度間の幅広い見直しを行ったものであり、法改正の方向性としては概ね評価できるものである。
しかしながら、具体的な施策としての課題は少なくない。この点、相談支援や権利擁護活動等を通じ、生活困窮者支援を行うとともに、関連法制度の改善に繋がる提言を長年続けてきた司法書士の視点から、生活困窮者自立支援制度及び生活保護制度の理念や目的を実現するため、以下の点について、今後さらなる改善を求める。1 住居確保給付金について
そもそもわが国では、求職者向けの住居確保給付金や生活保護制度における住宅扶助を除いて住居確保のための制度が欠如しており、今回の法改正の方向性を推し進め、住居確保給付金については求職要件と切り離す等、支給要件をさらに大幅に緩和し、ひいては普遍的な家賃保証制度としていくべきである。
2 生活保護世帯の子どもの大学等への進学支援について
進学による貧困の連鎖を解消するという観点から、進学時の取扱いについて抜本的な検討を行い、併せて給付型奨学金等、生活困窮世帯の進学支援のための関連諸制度を拡充する措置を講ずるべきである。
3 生活保護制度の捕捉率について
わが国の生活保護制度捕捉率は2割から3割程度であり、先進諸国と比較して際立って低い。真に支援が必要な経済的困窮者を生活保護制度に繋げていくため、制度の周知・啓発を徹底し、捕捉率の向上を図るとともに、一部自治体で見られるような生活保護行政の違法との謗りを免れない運用を直ちに是正する措置を講ずるべきである。
4 医療扶助の適正実施等について
医療が必要な者に対する医療抑制に繋がる運用がなされないよう、関係諸機関に周知徹底すべきである。
5 生活保護基準について
当連合会がこれまで再三にわたって主張してきたとおり、生活保護制度利用者が、日本国憲法第25条が保障する健康で文化的な最低限度の生活を真に営めるよう、ただちに基準引き上げを含む適正な支給水準への見直しを行うべきである。
6 被保護者家計改善支援事業について
行政による個人のプライバシーへの行き過ぎた干渉とならないよう留意し、個人の尊厳と自己決定権の確保に十分に配慮しつつ行われるようにすべきである。最後に、当連合会は、すべての市民が生活困窮に苦しむことのないよう、今後も司法書士に課せられた使命を果たしていく所存である。