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会長声明集
2022年(令和04年)03月29日
成年年齢引下げの改正民法施行に関する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
令和4年4月1日に成年年齢を18歳とする「民法の一部を改正する法律(平成30年法律第59号)」が施行される。施行日において成年に達する者の数は約225万人と試算されている。この改正により、これまで18歳~19歳の若者が未成年として守られてきた法律問題、消費者トラブルに対しても、今後は成年として自ら判断し、同時に責任を負うことが求められていくことになる。
独立行政法人国民生活センター作成の「成年年齢引下げに向けた消費生活センターの対応に関する現況調査報告」(2019年3月28日公表)によれば、契約当事者が20歳~22歳の相談は、18歳~19歳の相談と比べて1.4倍~1.9倍多く、この中には消費者被害の事案が含まれていると考えられる。このことから、未成年者取消権の行使を考慮して、事業者が意識的に勧誘又は契約締結の対象者から18歳~19歳の未成年者を除外していることが推認される。
そのような状況のもと、今後は「成年」になったばかりの18歳~19歳の若者の消費者被害が拡大することが懸念される。
改正民法の成立に際しては、参議院法務委員会の附帯決議において、①若者の消費者被害を防止し救済するための法整備、②マルチ商法への対策の検討、③消費者教育の充実、④本改正の周知徹底等の施策が施行日までに実施されるべき措置として示されたが、十分に効果を上げ、国民に浸透しているとは言い難い状況である。
よって、政府に対して、当該附帯決議に示されている成年年齢引下げに伴う弊害を防止するためにさらに実効性のある施策の実施を求める。
当連合会では、成年年齢引下げに対応する専門委員会において、今後生じるであろう問題について多面的に検討をするとともに、ホームページを通じて成年年齢引下げに関する情報を発信している。ここでは、具体的な事例を通じて、法律問題や消費者トラブルの未然防止及び問題解決の方法を紹介している。また、学校へ出向いての法律教室事業を展開する等、消費者教育についても積極的な取組をしている。
当連合会は、これからも消費者教育への取組を強化することにより若者の消費者被害を事前に防止するとともに、相談窓口の充実等を行い、若者にも頼られる法律家としての責務を果たしていく所存である。