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会長声明集
2020年(令和02年)11月05日
仙台高等裁判所令和2年9月30日判決を尊重し,国及び東京電力ホールディングス株式会社に対し責任をもって被害救済に取り組むことを強く求める会長声明
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
当連合会は,国及び東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)に対して,東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)のような重大事故の再発を防止し,被害に遭われた方々に対し,十分な被害救済に責任をもって取り組むことを強く求める。
原発事故から間もなく10年が経過しようとしているが,被害に遭われた方々の中には,未だに避難することを余儀なくされ,全国各地で厳しい避難生活を強いられている方が少なくない。また,大量に放出されたセシウム等の放射性物質による健康被害リスクを避けるため,やむなく故郷から避難する選択をしても,国による避難指示区域の線引きにより“自主的に避難”していると捉えられ,より厳しい状況で避難生活を続けている方も多い。一方,避難したいがやむを得ない事情から避難できずに故郷に留まっているものの生業を奪われてしまい生活に困窮している方もいる。
こうした被害者は,原発事故の後,国及び東京電力の責任を追及するとともに原発事故により被った損害の賠償を求めるため,全国各地で訴訟を提起してきた。仙台高等裁判所が令和2年9月30日に言い渡した控訴審判決は,これら訴訟の判決の一つである。
当判決では,一審判決に続き国及び東京電力の責任を明確に認め,国に対しては一審判決よりもさらにその対応を批判し,原子力発電所を管理する東京電力と同等の責任があると判断するとともに,賠償についても中間指針を上回る金額を認めた。国及び東京電力は,判決の内容を真摯に受け止め,今後二度と今回のような重大な事故が生じないよう責任をもって十分な対策を取るべきである。また,事故の被害に遭われた方々の被った精神的苦痛も含め,その被害を正しく認識し,被害救済に取り組むべきである。
国及び東京電力は判決を不服として上告をしたが,国及び東京電力には,今回のような重大事故の再発防止と被害救済に一刻も早く取り組むべく適切に対応することを期待する。
なお,当連合会では,東日本大震災の被災地における災害復興支援事務所の設置,仮設住宅の巡回相談,広域避難者への支援を含め,複雑化・深刻化する被災者・被災地の状況に応じた相談事業を核とした支援活動を継続している。また,原発事故被害者に対しては,原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続きを通じて,本人自身による申立てにおける書面作成援助あるいは代理申立てを行うといった支援活動等を継続しており,今後も積極的に支援活動を継続していく所存である。
最後にあらためて,国及び東京電力に対して,今回のような重大事故の再発防止及び迅速かつ十分な被害救済に責任をもって取り組むことを強く求める。