-
会長声明集
2019年(令和元年)06月12日
司法書士法一部改正を受けて~司法書士の使命と責任~(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
1.司法書士法の改正
「司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律」が令和元年6月12日に公布された。
17年ぶりに改正された司法書士法は,「目的規定を廃止し使命に関する規定を新設すること」,「懲戒権者を法務局又は地方法務局の長から法務大臣に改めること」,「懲戒における戒告処分につき聴聞の機会を保障すること」,「懲戒処分の手続に除斥期間を設けること」,「社員が一人の司法書士法人の設立を認めること」の5項目を内容とし,その第1条では,「司法書士法の定めるところによりその業務とする登記,供託,訴訟その他の法律事務の専門家として,国民の権利を擁護し,もって自由かつ公正な社会の形成に寄与する」ことを司法書士の使命としている。これは,司法書士が法律家として果たすべき責任を宣明したものであり,この規定の新設により,司法書士が法律事務の専門家であり,国民の権利擁護の担い手であることが明確となった。
また,使命規定の創設の一方で,懲戒権者を法務大臣とする改正も行われた。司法書士の現在の業務は,法務局の管轄を超えて広域にわたっていて,法務局(地方法務局)ごとに司法書士の懲戒を取り扱うという現行の制度は,実態にそぐわないものとなってきていて,多様な業務に対する十分な理解と全国で均一な取り扱いが,今まで以上に求められている。そのため,司法書士に対する懲戒権者を,現行法の法務局又は地方法務局の長から法務大臣に変更し,司法書士業務の現状に即した,適正・迅速な懲戒手続を行うこととしたのである。2.司法書士の使命
司法書士の業務は,不動産及び会社法人登記手続の代理,裁判所に提出する書類の作成,簡易裁判所における訴訟代理等が中心であるが,現在では,高齢化社会が問題となる中で創設された成年後見制度における専門職としての成年後見人への就任,相続財産その他の財産管理人への就任など,司法書士の業務の範囲は拡大している。また,空き家・所有者不明土地の問題への対応や,災害復興支援等に専門家として参画するなどの活動も積極的に行っている。今般の改正司法書士法第1条の使命規定は,これらの状況を背景に規定された。
当連合会は,この改正司法書士法第1条を受けて,全国の司法書士が司法制度の一翼を担う「暮らしの中の法律家」としての自覚を持ってその使命を果たすことができるよう,倫理の涵養をはじめとする研修もさらに充実させていく必要があると考え,全ての司法書士の会員(個人会員)に一定の基準のもとに研修を受講すべき体制をとることとしている。3.司法書士の責任
私たちは,使命規定に魂を込めるために,今回の法改正の趣旨と司法書士に課される責任を自覚し,登記・供託,裁判関係の業務はもとより,これまで行ってきた,高齢者・障がい者・子ども・経済的困窮者・セクシュアルマイノリティ・自死遺族・犯罪被害者の方々などの権利擁護のための事業もさらに推進する所存である。これにより,様々な考え方を持ち多様な生き方を求める人々が,お互いの存在を承認し,尊重しながら,共に協力して生きていくことのできる社会の実現に寄与したいと考えている。
司法書士の様々な業務を通じて,国民から負託された使命を実践するために,これまで以上に国民の権利擁護の責任を果たしていく所存である。