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会長声明集
2018年(平成30年)03月16日
東京電力福島第一原子力発電所事故から7年-さらなる支援継続へ-(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
東京電力福島第一原子力発電所事故(以下「原発事故」という。)の発生から7年が経過した。
復興庁の発表によると、平成30年2月13日現在、全国47都道府県で73,349名もの多数の避難者が未だに不自由な避難生活を強いられている。
国が設定した避難指示区域内からの避難者に対し東京電力から支払われてきた「精神的苦痛」に対する損害賠償は、本年3月で終了することとされている。しかし、加害者である東京電力の主導によって一方的に打ち切られるべきではない。原発事故により避難を余儀なくされた方々は、かけがえのない故郷が奪われるという重大な被害を被ったのであるから、その被害の完全回復に向けて、今後もできる限りの方策が取られるべきである。
また、避難指示区域外からの避難者(いわゆる自主的避難者)に対する福島県による無償住宅支援策が平成29年3月末に終了してから1年が経過しようとしているが、それぞれの避難先の自治体の対応によって、住宅支援策に格差が生じている。災害救助法等の現行法が想定する避難所から仮設住宅、復興住宅という形で進む住宅支援策では、原発事故のような避難生活が長期に、かつ避難先が広範囲にわたる災害に対する法的な支援に限界があると言わざるを得ない。そのため、1年ごとの更新による居住関係の不安定化や、仮設住宅間において住替えが認められない等の問題が生じている。
原発事故による避難者に対する居住関係の支援は、原発事故子ども・被災者支援法に規定されているとおり、「居住福祉」の観点に立った実効性ある避難先の住居を確保する施策がなされるとともに、あくまで「放射性物質による放射線が人の健康に及ぼす危険について科学的に十分に解明されていない」との現状認識に立った上で、「居住」「移転」「帰還」のいずれを選択しても適切に実行することを前提としてなされるべきである。
さらに、「原発避難いじめ」のような、原発事故による避難者の尊厳を踏みにじるような行為は誠に遺憾である。避難指示区域内からの避難者であるか区域外からの避難者であるか、避難を選択したか居住・帰還を選択したかを問わず、すべての避難者について、人としての尊厳が守られなければならない。
日本司法書士会連合会は、かねてより原子力損害賠償紛争解決センターによる和解仲介手続(原発ADR手続)を通じて原発事故により被害を被った方々の損害回復に向けた活動を行っているが、引き続き、一人ひとりに寄り添いながらその声を拾い上げ、積極的な支援活動に力を尽くしていく所存である。