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会長声明集
2017年(平成29年)04月12日
熊本震災から一年に寄せる(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 三河尻 和 夫
平成28年4月14日午後9時26分、続く2日後の16日午前1時25分、熊本地方において最大震度7の地震が二度発生した。この最初の大きな揺れから1年が経過しようとしている。日本司法書士会連合会(以下「当連合会」という。)は、あらためて熊本地震で犠牲になった方々に対して哀悼の意を表するとともに、被災された全ての皆様方に心からのお見舞いを申し上げる。
日本国内において、このような巨大地震が同一地方において、しかもこれだけ近接したタイミングで発生した例は過去になく、特に本震とされた二度目の揺れにより多くの住居や公共施設に甚大な被害が発生した。また、この巨大地震の揺れは容易に収まらず、その後の余震回数は揺れを感じないものを含め13万回を超えるという。
熊本地震による人的被害は災害関連死を含めると200名を超え、住家被害については一部損壊まで含めると195,091棟に上る。特に震度7を2度計測した上益城郡益城町においては、町全体の家屋の9割以上にあたる10,155棟が被害を受け、損壊を免れた家屋はわずか157棟だけであった。
この震災により、1,166箇所の避難所に最大で196,325名の方々が避難し、避難所での寝食が難しい人々の中には車中泊を余儀なくされる方々もいた。
これまで熊本県下16市町村に合計4,303戸の応急仮設住宅が建設されたものの、これでは足りず更に13,000戸以上のみなし仮設住宅(民間住宅借上げ制度)や補修型みなし仮設住宅が利用されている。平成28年11月18日をもって全ての避難所は閉鎖されたものの、いまだ多くの市民が応急仮設住宅や車中などでの避難生活を強いられており、心身ともに安らぎを得られる状況にはない。
当連合会では、平成28年4月18日、熊本県司法書士会に災害対策実施本部を設置し、被災者の支援にあたるべく、早急に県下各地の被災状況を調査の上、被災者の救援活動を開始した。具体的には、緊急相談会をはじめとする県下13市町村における無料相談会の実施、フリーダイヤルによる無料の電話相談、各応急仮設住宅を一軒一軒巡回する巡回法律相談、震災による市民間紛争の早期解決を図る震災ADRなどを今日まで継続して実施している。
また、平成28年8月1日には、阿蘇郡西原村に常設の無料相談場所として、災害復興支援事務所(風の里司法書士相談センター)を設置した。ここでは、月曜日から土曜日まで継続して無料の相談会を実施している。
ところで、平成29年4月13日をもって「総合法律支援法の一部を改正する法律」に基づき昨年7月から開始された、被災者が無料で法律相談を受けることのできる法テラスの「被災者法律相談援助」が終了する予定となっている。しかし、生活再建のスピードは被災者一人ひとりで異なり、未だ多くの被災者の方々が法的支援を必要としている。先の東日本大震災からの教訓からは、仮設住宅における生活から起因する問題やその住宅借用期間等の問題で新たな悩みを抱えていくことが予想され、とりわけ高齢の単身者や障がいのある方などにとって深刻な問題である。
当連合会は、これらの被災市民と共に歩む法律家として様々な支援活動を通じ、この大きな困難を乗り越えようとする一人ひとりの被災者にしっかりと寄り添いながら息の長い支援を継続していくことをあらためて表明する。