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会長声明集
2016年(平成28年)12月15日
カジノ解禁法案に関する会長談話
平成28年12月15日に成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案」(いわゆる「カジノ解禁法案」)について、当連合会は以下の理由により遺憾の意を表明します。
カジノ解禁法案は、ホテルや商業施設とともに刑法で禁止されたカジノを備える複合施設が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであるという考えのもとにカジノを解禁することを目的としているものです。
この法案提出者らからは、観光誘致や地域経済の活性化を狙いとしたその経済的効果のみが謳われていますが、我が国には既に公営ギャンブルやパチンコが存在しており、これらによるギャンブル依存症患者は、厚生労働省研究班報告によると、我が国の成人人口の4.8%に当たる536万人以上に上ると言われています。
カジノの先進国である米国、カナダ、豪州等での大規模な社会調査によれば、ギャンブル依存症の罹患率は、概ね成人人口の1~2%程度であり、我が国のギャンブル依存症率は世界的に見ても際立った数字であることが分かります。これは、我が国には公営ギャンブルが身近にあり、容易にアクセスできることが高い原因であると考えられています。
ギャンブル依存症の問題点としては、依存症患者はその行為に費やす金銭や時間を自分ではコントロールできなくなることで借金を重ねた挙げ句に多重債務に陥り、犯罪、自殺、離婚等一家離散につながるおそれがあり、ギャンブル依存症患者のみならず、その家族や親族、関係者への悪影響も計り知れず、これら依存症に対処する多大な経済的・社会的損失は容易に考えられ、刑法によって禁止されている賭博に関する罪を解禁してまでその経済的効果を優先させることは妥当ではありません。
カジノ解禁を求める法案が国会に初めて提出されたのは平成25年のことでありますが、それ以来、カジノによるギャンブル依存・マネーロンダリング・治安悪化という負の側面があることを認めながらも、その対応策を「法施行後の政府の法整備に委ねる」と謳うのみで、深い懸念を抱かずにはいられません。
平成28年12月15日
日本司法書士会連合会
会長 三河尻 和夫