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会長声明集
2016年(平成28年)04月21日
成年後見制度利用促進関連二法の成立について(会長声明)
日本司法書士会連合会
会長 三河尻 和 夫
「成年後見制度の利用の促進に関する法律(以下「利用促進法」という。)」が平成28年4月8日、「成年後見の事務の円滑化を図るための民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(以下「民法等の一部改正」という。)」が平成28年4月6日それぞれ成立した。
当連合会は、成年後見制度の発足を見据え、その前年である平成11年12月に社団法人成年後見センター・リーガルサポート(現公益社団法人)を設立し、以来、成年後見人等の給源として同制度の発展に尽力してきた。
現在、500万人ともいわれる認知症高齢者に対して、成年後見制度の利用者は18万人程度にとどまっており、この制度が十分に利用されているとは言いがたい。公務員の就労制限をはじめとして200近い権利制限があるといわれているが、こうしたことが利用が進まない原因のひとつであろう。
制度発足から15年を経過し、現行制度の利用が進まない状況について、当連合会は上記リーガルサポートや日本成年後見法学会等と検討を進めてきた。現状を改善し、利用を促進するためには、家庭裁判所や所管官庁のみならず全国の自治体における検討も必要であることから、かねてより上記関係団体とともに、この2つの法律の制定を要望してきたが、このたび、これらの法律が成立したことは、わが国の成年後見制度の健全な発展に寄与するものと、高く評価する。なお、先ごろ最高裁判所より成年被後見人の行為による損害賠償責任の範囲について、一定の基準が示されたところであるが、成年後見人の被後見人に対するかかわりが希薄にならないような措置を講じる必要もあろう。
利用促進法の成立により、内閣府に特別の機関として成年後見制度利用促進会議及び有識者で組織される成年後見制度利用促進委員会が設置され、成年後見制度が抱える様々な問題について審議を行い、3年以内に必要な法制化がされることになる。
当連合会は、成年後見制度の担い手としての役割を主導的に果たしてきた司法書士の知見を上記有識者で組織される委員会においても大いに活用されることを望むものであり、それが社会に対する責務でもあると認識しているところである。
民法等の一部改正では、成年後見人による郵便物等の管理や成年被後見人の死亡後事務に対して一定の権限が与えられることになるが、成年被後見人の権利をみだりに侵害することなく相続人等との軋轢を起こさないよう適切に運用されなければならないと考えるものである。
参議院では、「障害者の権利に関する条約第12条の趣旨に鑑み成年被後見人等の自己決定権を最大限に尊重する体制を整備するとともに、成年後見人等の不正の防止が急務であるとの観点からも、成年後見人等の事務の監督体制の整備、具体的には家庭裁判所、関係行政機関、地方自治体等の人的体制の整備を十分に講じること」との趣旨の附帯決議が採択されているが、連合会としては、この附帯決議の趣旨に大いに賛同するものであり、附帯決議が求めている事項の実現とともに成年後見制度の新たな改革につながることを期待したい。