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会長声明集
2015年(平成27年)05月12日
生活保護の住宅扶助基準及び冬季加算引き下げに反対する会長声明
日本司法書士会連合会
会長 齋 木 賢 二
平成27年度予算において、生活保護の住宅扶助基準及び冬季加算について、それぞれ平成27年度から減額することが発表された。当連合会は、以下の理由からこの引き下げに強く反対するものである。
1.国は、「健康で文化的な最低限度の住生活」の基準として平成23年3月に閣議決定された住生活基本計画の中において、「最低居住面積水準」(単身世帯の場合25㎡以上)を定めている。しかし、平成26年に厚生労働省が実施した生活保護利用世帯11万世帯の居住実態調査によれば、最低居住面積水準を達成した住宅はわずか13%である。むしろ、現行の住宅扶助基準を引き上げてこの達成率を上昇すべきところ、今回の住宅扶助基準引き下げは生活保護世帯の住環境を最低居住面積水準以下の住居での生活を強いるものであり、閣議決定された最低居住面積水準を蔑ろにし、すべての住宅において達成することを目指す国の政策と矛盾する。
2.国が掲げる住宅扶助基準引き下げの根拠の一つとして、一般低所得世帯の家賃実態より住宅扶助基準が高額になることがある。しかし、一般低所得世帯の家賃平均額と、生活保護の住宅扶助基準上限額は、本来性質が異なるため比較すべきでない。
3.予定されている住宅扶助基準の引き下げ額は、複数世帯の住宅扶助基準が軒並み大幅な引き下げとなっている。平成25年8月から始まった生活保護基準引き下げと相俟って、母子家庭などの複数人世帯に甚大な影響を及ぼすことが考えられ、本格実施を企図する子どもの貧困対策基本法の理念にも反する。
4.冬季加算の削減について、厚生労働省は生活保護基準部会に対し「生活保護世帯の光熱費(冬季増加額)は全国的に冬季加算額を下回っており、特に北海道、東北、北陸では乖離が大きくなっている」との資料を示し、その根拠とした。この資料が示す冬季加算額(光熱費)の差とは「光熱・水道代の冬季(11月~3月)の平均額から4月~10月の平均額を差し引いたもの」とされ、冬季加算月とそれ以外の期間を比較したものであるところ、実際は、北海道・東北等の寒冷地では10月から6月まで暖房を必要とするため「4月~10月の光熱費」は他の地域と比べ高額となる。これにより、「11月~3月」の光熱費との差が小さくなるうえ、灯油の需要やその他防寒・除雪に必要な経費は考慮されていないことから、当該資料が寒冷地の冬季加算額の実態を正しく示しているとは言えない。
さらに、電力会社において電気料金の値上げが予定されている中、冬季加算を削減することは、引き下げ名目額以上の暖房のための電気の節約を迫られることとなり、生活保護利用者の生活に、ひいてはその生命にかかわりかねない問題である。