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総会決議集
多重債務者対策と自殺対策とは密接な関係であるとの認識に立ち、多重債務者救済を積極的に推進する決議
【議案の趣旨】
日本司法書士会連合会は、本年6月8日に政府において閣議決定された「自殺総合対策大綱」の基本理念のとおり、自殺には経済・生活問題など様々な要因が含まれ多重債務問題とは密接に関係しているとの同一認識に立ち、多重債務者救済のため、今後各地方自治体に設置される「多重債務者相談窓口」担当部署と「自殺総合対策」担当部署との連携を深め、官民一体となった司法書士制度の活用による多重債務者救済対策を積極的に推進する。
以上のとおり決議する。
2007年(平成19年)06月22日
日本司法書士会連合会 第69回定時総会【提案の理由】
- 警察庁生活安全局地域課の資料によると、平成18年度の自殺者数は3万人を超え9年連続「年間自殺者数3万人」となった。昨年施行された「自殺対策基本法」の基本理念は、「自殺対策は、自殺が個人的な問題としてのみとらえられるべきものではなく、その背景に様々な社会的な要因があることを踏まえ、社会的な取組として実施されなければならない。」としている(第二条基本理念による)。
- 9年連続「年間自殺者数3万人」。これは、毎日90人の方が自ら命を絶っている計算になる。人口10万人あたりの自殺による死亡率も、主要国ではロシアについで2番目に高く、アメリカの2倍、イギリスの3倍にもなる。
また、日本における交通事故での年間死亡者数が1万人を下回り、交通事故死削減のためのキャンペーンが毎年行なわれる中、自殺対策は、行政、司法、医療を含め、総合的に有効な対策が実現されることがなかった。 - その反省を踏まえ、昨年施行された「自殺対策基本法」を受け、今月8日に政府において閣議決定された「自殺総合対策大綱」においては、社会問題として自殺を捉えるべきであることが確認され、自殺を防ぐためには精神保健的な視点だけでなく、社会・経済的な視点を含む包括的な取組が重要であり、このような包括的な取組を実施するためには、様々な分野の人々や組織が密接に連携する必要があるとしている。
現在、「自殺対策基本法」の施行を受けて、全国の都道府県で、「自殺対策連絡協議会」が設置され始め、法律や医療、教育や労働、自殺予防や遺族支援などの専門家が、官民の枠を超えて自殺対策に取り組もうと連携を始めている。 - 昨年、近年大きな社会問題になった多重債務問題に関して、我々司法書士は積極的に取り組み、出資法上限金利引下げに大きな役割を果たした。
これを受けて、政府は、金融庁に「多重債務者対策本部」を設置し、「多重債務問題改善プログラム」が策定されるに至り、同プログラムにおいては、多重債務相談窓口を各地の行政に設置し、200万人、300万人ともいわれる多重債務者を救済しようとする取組が、全国各地で動き始めている。昨年度の自殺者総数32,155名の内、経済生活問題を原因・動機とするものは、6,969名で全体の22%と、依然として高い割合を占めており、自殺の防止、自死遺族の支援等の自殺総合対策の中でも、最も積極的に取組むべきものといえる。 - しかし、行政の「多重債務相談窓口」と「自殺対策」の取組む担当部署は異なり、俗に言われる「行政の縦割り」状態のままでは、多重債務対策・自殺対策としても有効的な役割を果たせない。行政の中での横の連携を確立できれば、多重債務・自殺対策としての大きな原動力になると確信する。そのためには多重債務問題に取り組む我々司法書士自身が、多重債務・自殺問題が密接に関連していることを認識して、地元の行政機関とともにこの問題解決に取り組むことが重要であると考える。
- さらに、本年7月東京をスタートに翌2008年3月まで、全国各地の行政と民間団体が共催となって「自死遺族支援全国キャラバン」が行われると聞く(自死遺族支援全国キャラバン実行委員会が企画、なお上記7月の東京でのシンポジュウムは、同実行委員会と内閣府が共催で開催される)。このキャラバンの趣旨は、(1)自殺総合対策の理念を全国各地に根付かせること、(2)全国47都道府県で「自死遺族の集い」設立のきっかけを作ること、(3)「1000人の声なき声に耳を傾ける」との運動により自殺の実態を解明すること、(4)官民学の枠を超えた自殺対策関係者の連携基盤を各地で構築すること、となっている。
当面の連合会が出来る施策として、このキャラバン活動に参画すべきと考える。また各単位会は連合会の方針のもと、窓口となる全国各地の行政にも働きかけ、司法書士の多重債務者相談ブースを設けるなど積極的に参加すべきと考える。このような組織としての率先した取組は他の職能団体は未だどこも実践していない。よって、議案の趣旨記載のとおりの総会決議を求める。