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総会決議集
出資法の上限金利引き下げを求める決議
【決議の趣旨】
日本司法書士会連合会は、依然として減少しない多重債務問題の原因となっている消費者金融及び信販会社の高金利を容認する出資法の上限金利につき、その引き下げを求め、以下のとおり決議する。
- 出資法5条の上限金利を、利息制限法1条の制限金利まで引き下げること
- 貸金業規制法43条のみなし弁済規定を撤廃すること
- 日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利を廃止すること
上記を達するために、行政・国会などに対し具体的な提言をする。併せて広く市民・マスメディアに消費者金融及び信販会社の高金利の不当性を訴える活動を行なう。
以上のとおり決議する。
2005年(平成17年)06月24日
日本司法書士会連合会 第66回定時総会【提案理由】
平成15年7月、ヤミ金融対策法(貸金業規制法及び出資法の一部改正法)制定の際、出資法の上限金利については同法施行後3年を目途に見直すこととされ、その時期は平成19年1月といわれている。
今後の立法過程を考えればすでに極めて重要な時期にさしかかっており、多重債務問題対策に力を注いできた司法書士としてはこの動きは決して見過ごすことができない。
平成15年に24万件を突破した個人自己破産申立件数は、平成16年に減少こそしたが、一方で、個人債務者再生手続の申立件数は増加し、また司法書士が代理人となる任意整理が急増している現実があり、多重債務問題は依然として経済苦による自殺や犯罪、夜逃げなどの原因であることに顕著なように、深刻な社会問題であることに間違いない。
現在わが国の公定歩合が年0.10%、銀行の貸出約定平均金利は年2%以下という超低金利状況下であるにもかかわらず、出資法の上限金利は年29.2%という大変な高金利であり、これが多重債務問題を惹き起こす要因であることは自明のことである。
金融広報中央委員会が実施した世論調査では、2003年における貯蓄を保有していない世帯の比率が21.8%にも上っており、このことは、余裕資金のない世帯が突発的な資金需要に対応できず出資法上限金利に近い金利に手を出し、たちまち生活が立ち行かなくなる事実を伺わせている。
そこで、市民が安全に生活できる消費者信用市場の構築と多重債務問題の抜本的解決のためには、少なくとも出資法の上限金利を利息制限法の制限金利にまで早急に引き下げる必要がある。
同様に経済的弱者保護の為に極めて重要な法律たる利息制限法に対して例外として存在する貸金業規制法43条のみなし弁済規定は廃止するべきであるし、出資法附則に定められた日賦貸金業者及び電話担保金融に対する特例金利も廃止するべきである。
ところが貸金業者側は、上限金利を引き下げたことがヤミ金を跋扈させる原因になったと説き、早稲田大学坂野友昭教授による論文「消費者信用市場における上限金利規制の影響~米国における先行研究のサーベイ」を基に金利自由化論を唱え、出資法の上限金利の引き上げや制限そのものの撤廃を目指して猛烈な議員要請を繰り広げていると聞き及んでいる。
同論文に対しては、既に日司連消費者法制検討委員会が意見書「上限金利撤廃の弊害と引下げの必要性」を取り纏めており、各方面からの支持が寄せられている。また、日弁連消費者問題対策委員会からは、金利自由化に踏み切った米国の実態調査(「消費者信用事情訪米調査報告書」)が発表され、金利自由化と悪質事業者の市場からの排除が、別次元の問題であることが明らかとなっている。
上記のような状況下において、貸金業者側による金利引き上げ・金利規制撤廃の要請に対抗し、上限金利引き下げを実現するために、今、司法書士が一丸となって関係各機関への働きかけと国民的な世論の形成を行うべきである。