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意見書等
2006年(平成18年)03月08日
法務省大臣官房司法法制部司法法制課司法制度第一係 御中
「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律施行令案」及び「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律施行規則案」に関する意見
日本司法書士会連合会
1.はじめに
日本司法書士会連合会(以下「連合会」という。)は,裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下「ADR法」という。)の施行に向けて,司法書士 として果たすべき役割の自覚と理解を強く意識しながら,司法書士が関与して実施するところの調停を中心とした紛争解決機関の開設に向け鋭意検討を進めてい る。
このたびの,標記ADR法の委任に基づく政令案及び法務省令案については,ADR法の施行予定までの時間を考慮するならば,全国50の司法書士会が取り組 む「ADR法第5条に定める認証を得た認証紛争解決事業者」としての基盤整備活動を促進し,かつより具体的な目標を与えるものであり,大いに歓迎するとこ ろである。
引き続き,司法書士制度がADR法の理解促進と国民への普及に寄与しうるよう,全力で取り組む覚悟を申し上げ,今般の標記政省令案に対する意見募集に以下のとおり応える。2.意見書の形式
連合会としての意見書は,下記のとおりである。
連合会に設置された検討部門であるADR対策部における意見を中心に述べるものであり,全国の司法書士会から意見が出されることも予想されるが,これらの意見書については,意見の統一を図ったものではないことを申し添える。
また,法務省令案については,意見の対象となる条文についてのみ触れることとし,異論のない点については取り上げていない。記
1.「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律施行令案」について
全二条からなるこの施行令の案に対しては,異論はない。なお,意見募集の対象とはなっていないが,政令に委任された「認証申請の費用」については,司法書 士法人による認証申請や複数資格者による合同型認証申請も考えられるところから,新規申請・変更申請共に低廉に設定されることを期待している。2.「裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律施行規則案」について
(※以下において「第○条」と記載されるものは,法務省令案の条文を指す。)
(1)第5条・第12条において,申請者等の「本籍」を記載することとなっている点につき,ADR法が日本国籍を有しない者を排斥する法律ではないことは 理解しているものの,他の関係法令との整合性に配慮しつつ,日本国籍を有しない者が紛争解決事業者となる場合の申請等手続に疑義を生じることのないよう明 確にされることを希望する。
(2)第5条第7号に定める「民間紛争解決手続の業務を行う日及び時間」については,利用者にとって極めて重要な情報であることは理解しうるが,事業者の 時機に応じた実施企画を阻害することにつながるおそれがある。第10条第2号で「変更の認証を要しない軽微な変更」と規定していることも踏まえ,第9条の 掲示事項とすることなどにより,第5条の「認証申請書のその他の記載事項」から除外することを検討していただきたい。
(3)ADR法第8条第1項第2号における「民間紛争解決手続の業務を行う事務所の所在地」は,第14条第1項第1号に言う「実施した場所」と同義ではないと考えられるが,この点で第5条の記載事項に「実施が予定される場所または方法」を加えることの検討を希望する。
(4)第7条によれば,いわゆるオンライン申請によるADR法第5条の認証申請を行えるものと思われるが,その際のオンライン申請書様式の提供及び添付書面の提供方法などが不明である。
また,書面により法務大臣に対する認証の申請を行う場合,その申請を受け付ける場所について示されておらず,この点が早期に明確にされることを希望する。
(5)第14条第1項第2号の「請求がされた年月日」は,ADR法第25条第1項に定める「認証紛争解決手続における請求の時に,訴えの提起があったもの とみなす。」とする規定と連動するものと考えられ,ADR法の「請求の時」という規定については,解釈により異なる時期に理解されるおそれが否定できない ことから,法務省令においてこの解釈を明確にされることを希望する。
(6)第17条の事業報告書別紙様式第7号について,詳細な報告を求めることは,適正な認証紛争解決事業が実施されているか否かを確認する上で重要である ことを理解しつつも,行き過ぎた報告書の提出要求は,認証紛争解決事業者の事務負担の増大とひいては認証手続への不信につながるおそれもあると考える。
そこで,認証申請事項と同一の事項であって,変更のない事項については,報告書への記載を省略し「変更なし」と届け出ることを可能とする様式を設けていただきたい。
また,第12面・第13面における「認証紛争解決手続の状況」の記載を求められる事項は,あまりにも詳細すぎると考えられ,統計資料を収集することに主眼 がおかれているのではないかとの疑問すらいだかせる。「価額の別」の区分に至っては,裁判手続を強く意識した,少額裁判の対象事案・簡易裁判所の対象事案 に始まり7段階に区分する必要性に疑問を感じる。この部分については,強く再考を希望する。
(7)ADR法第20条においては「法務省令で定めるところにより,その事業年度の事業報告書,財産目録,貸借対照表及び収支計算書又は損益計算書を作成 し,これを法務大臣に提出する」ものとされるところ,司法書士会などが認証紛争解決事業者となる場合は,司法書士会事業の一部として実施される認証紛争解 決事業に要した経費を特定することが困難な決算報告書となることも予想され,認証紛争解決事業のみを詳細に把握しうる計算書類の報告を別に要求されること となるか疑問が残る。この点も「法務省令で定めるところ」となるのではないかと予想していたが必ずしても明確ではない。よって,報告者においてとまどうこ とがないような基準を示していただきたい。以上