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意見書等
2021年(令和03年)12月20日
法務省民事局参事官室 御中
家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等IT化に対する意見
日本司法書士会連合会
会長 小澤 吉徳
当連合会は,標記について,次のとおり意見を申し述べる。
【意見】
1 家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等IT化については,民事裁判手続との差異を十分に検討すべきであることから,民事裁判のIT化とは別に慎重に議論すること
2 今般の民事訴訟法改正に併せて,離婚・離縁についても,オンラインによる期日での和解・調停の成立を可能とすること
3 家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等のIT化に際し,国民の裁判を受ける権利が侵害されないよう,十分な配慮をすること
を求める。
【理由】
1 家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等IT化を検討することについて
現在,民事裁判のIT化に関する民事訴訟法改正について,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会での調査審議が行われているところである。
日本の司法手続のIT化については,2018年6月に閣議決定された「未来投資戦略2018」や「成長戦略フォローアップ」においても今後全面IT化の実現を目指すことが提言されてきたところである。
これは,民事裁判のみならず,家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等についても同様にIT化の実現をも含むことは無論である。
この点,現在,公益社団法人商事法務研究会において開催されている,「家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等IT化研究会」において検討が進められているところである。
家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等のIT化を目指すにあたっては,個人の身分変動を伴う手続や,実際の権利行使,権利保全など国民の権利実現に直結する重大な意味を成す手続であることから,国民の権利擁護を意識した議論が求められるものと思料する。
また,これらの手続は,民事訴訟とは異なる当事者主義的構造となり,同一の事件において,複数の者が各々の立場において,システムを利用することが想定されることから,民事裁判のIT化とは異なる視角から特段の配慮をもった議論が必要となる。
そこで,当連合会として,家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等のIT化については,国民の権利擁護に直結する重大な法制度の決定となることから,国民の意見を取り入れつつ,更に十分な議論を尽くすべきであることを申し述べる。
2 離婚・離縁の和解・調停手続のオンラインによる実施について
前記のとおり,国民の意見を取り入れつつ,更に十分な議論を尽くすべきであると考えているが,その一方で,早急な対応の検討を要するものがあることも,また,事実である。
今般の民事訴訟法改正の答申に向けた議論の中では,オンラインでの和解期日を設ける方向性が示されているなど,オンラインでの期日において和解や調停を成立させることについてのニーズは高まっている。
一方,離婚・離縁の調停においては,成立時の当事者の当該家庭裁判所への出頭が必須とされており,また,離婚・離縁訴訟の和解においても,当事者の出頭が求められている。現在,家事調停についても,ウェブ会議による期日の試行的な実施がされており,今後,そのような実施が全国的に広がった場合を想定すると,今般の民事訴訟法を改正する際に,ウェブ会議での期日において離婚・離縁の和解や調停を成立させることを可能とすることが相当である。
3 本人申立てサポート体制の充実について
家事事件手続及び民事保全,執行,倒産手続等IT化の実施に際しては,国民の裁判を受ける権利を制限することがないよう,十分な配慮を施した法制度の整備が望まれる。
とりわけ,本人申立てを行う者に対しては,法的な支援のみならずIT機器の使用に関する支援も必要となる場合もあることから,これまでより更に本人申立てのサポートが重要となる。
司法書士は,司法書士法第3条の規定に基づき,従前,各種手続について本人申立ての際の,書類作成に携わってきたところであるが,当連合会において,IT化の実施に際しても,国民の裁判を受ける権利を擁護するため,本人申立てのサポートに積極的に取り組む所存である。