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意見書等
2019年(平成31年)03月01日
法務省 御中
日本法令の国際発信に関する意見 -日本法令外国語訳データベースシステムの運用を中心として‐
日本司法書士会連合会
日本の法令の海外への発信について,現在運用されている日本法令外国語訳データベースシステムを中心に,以下の各項目について簡単に意見を述べる。
1.日本法令外国語訳及び日本法令外国語訳データベースの必要性,ニーズについて
グローバル化に伴い,日本の法令の外国語訳を提供することは必要であり,その提供対象も外国人や外国の組織を視野に入れ一層の充実が望まれる。国際的な取引に不可欠の契約書や企業の規則,その他様々な場面で日本法が適用される場合に,日本の法律について誤りなく理解され,将来の紛争を生じさせないようにするには,そこで引用される日本法を外国語に訳すための標準となる訳文が提供されている必要があり,取引相手である外国人や外国の組織にとっても,オフィシャルな翻訳資料を簡易に取得できるようにすべきである。また,法律や経済に関与する者や組織にとどまらず,国際的な取引について不可欠となる文書の翻訳に従事する専門的な翻訳業者にとっても,正確でオフィシャルな外国語訳を入手できることは非常に有用である。
以上により,現在進められている日本法令の外国語訳を簡易に取得できる日本法令外国語訳データベースシステムを維持し充実させることを要望する。
2.日本法令外国語訳データベースシステムの現状のサービスに関する評価
不動産取引業務に際して英訳をするために利用する必要な法律の英訳は,現在の日本法令外国語訳データベースシステムでほぼ提供されていると思われるが,今後,他の法律について,早急に提供していただくよう要望する。
なお,当連合会内で,現在のサービスにおける「文脈検索」が便利だとの意見が寄せられていて,その点は評価できると考えるが,法令検索で特定の法律を表示した後に,その法律内で用語や文の検索ができるように改善を望む(現状では,例えば「不動産登記法」という法律を表示した後に,「登記識別情報」という単語を,その画面で検索することができない。)。また,システム自体の問題ではないが,法律間での訳語の統一ができていない部分があると思われるので,その点についても改善をすべきではないかと考える。
重要な判例や行政先例についても,裁判所や所管庁と連係して,該当条文から検索が可能なようにすることも検討すべきだと考える。
3.今後,期待される取組,拡充の方向性
⑴ 対象とする外国語の範囲
基本的には,英語訳をすることで,ほとんどの外国人や組織について問題はないと考えるが,近隣アジアの諸国については,今後も経済的な繋がりや様々な取引が増えていくことと考えられるので,英語以外の言語での提供も検討すべきであると考える。
⑵ 法制定や改正への対応
新しい制度や変更された制度に関する法情報は,より速やかに対応する必要があるので,新しく制定された法令や法令改正にも迅速に外国語訳がなされシステムに反映する方策を検討すべきである。
また,法令情報として,改正情報(いつ,どの条項がどのように改正され,いつ施行されたか),を未施行改正も含めて,確認ができるようにすることも検討すべきだと考える。
⑶ 電子政府の総合窓口e-Gov(イーガブ)法令検索との連係等
日本法令外国語訳データベースシステムは法務省所管のシステムであるが,ユーザーの視点で見ると,総務省所管のe-Gov法令検索と連係又はシステム統合することで,日本語による法令と外国語法令の情報が第一義的に提供されるようにすることも検討すべきものと考える。
また,日本法令外国語訳データベースシステムを「データベース」としてみるときには,e-Gov法令検索において,法律と下位規範である政令が一括で表示されて,確認することができるが,日本法令外国語訳データベースシステムにはそのような機能がない。外国語訳の進行状況の関係で,直ちにe-Gov法令検索と同等の情報提供方法が実現することは困難であるとは思われるが,将来的にはe-Gov法令検索と同様の検索を可能とすべきである。なお,日本語情報についてはe-Govで調べることが可能であるので,行政資源を効率よく使うために,オフィシャルな外国語訳とならないとしても,e-Gov法令検索に外国語翻訳情報を付け加えるか,機械翻訳可能なレイヤーを実装する方法も検討すべきではないかと考える。
⑷ レイアウトについて
現在のウェブサイトはパソコンで閲覧することを前提にしているものと思われ,スマートフォンやタブレットなどで閲覧すると,画面のデザインが崩れてしまうので,これらのデバイスでの閲覧にも対応したユーザーインターフェイスにすべきである。