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意見書等
2019年(平成31年)01月31日
法務省民事局民事第二課 御中
「変則型登記の解消に向けた法律上の措置に関する担当者骨子案」に対する意見書
日本司法書士会連合会
会長 今川 嘉典
標記担当者骨子案について,当連合会は,次のとおり意見を申し述べる。
第1 変則型登記がされた土地の表題部所有者の登記に関する措置
1 登記官による所有者等の探索
(1) 探索の開始について
【意見】変則型登記について,職権で所有者等の探索を行うことに賛成する。但し,「必要があると認めるとき」と並べて,探索を促す申出が可能であることを明記すべきである。
【理由】変則型登記がされた土地について,その法的な管理と処分ができるように,不動産登記上の手当をすることは必要である。その手段として,変則型登記のなされている土地について,その所有者等を探索し特定することは有用であり,係る土地について,探索された所有者等からの登記申請を期待することはできないので,これを職権で行うことが必要である。もとより,変則型登記について,現在権利関係を争っている者が存在するときには,係る探索を行う必要はない。
探索の対象となる所有者は,表題部の登記時の所有者を表題部所有者とするための探索,特定に限ることなく,現に所有権(共有持分権)を有する者も対象とすべきである。
なお,利用されている一体の土地の一筆に変則型登記がされた土地が存在し,早期に当該土地の処分の必要性が生じることもある。しかし,変則型登記がされた土地の存在を登記官が知ることができない場合もあるので,利害関係人その他の者からの探索の申出を認めることにより,変則型登記の解消を促進すべきである。
(2) 登記官の調査権限について
(3) 利害関係人による意見の提出について
【意見】(2)・(3)のいずれも賛成する。
【理由】変則型登記の所有者等を探索するためには,変則型登記がなされている土地についての実質的な調査が必要であり,変則型登記解消の必要がある以上,登記官に所有者等の探索に必要な調査のための権限を付与すべきである。また,正確な調査を行うためには,変則型登記がなされている土地についての実情や情報を有している地方公共団体からの情報を求めることや,利害関係人からの意見,資料の提出を認める必要がある。
2 所有者等探索委員(仮称)による所有者等の探索
(1) 所有者等探索委員(仮称)制度の創設について
【意見】所有者等探索委員制度(仮称)の創設に賛成する。
【理由】変則型登記がなされた土地の所有者等を探索するためには,現地の調査や関係者からの聴取が必要であり,その全てを登記官のみが行うことは困難である。そのために,公平な立場で,不動産及び不動産登記の専門的知見を有する者の探索の結果を活用することが有効だと考える。係る知見を有する者としては,登記申請手続を職務とし,公的に能力が担保されている,司法書士と土地家屋調査士が適すると考える。
(2) 所有者等探索委員の調査権限等について
【意見】賛成する。
【理由】登記官の探索に活用するためには,所有者等探索委員は登記官が自ら行うのと同様の調査権限を持つ必要がある。
3 所有者等の特定及び職権による表題部所有者の登記
(1) 表題部所有者として登記すべき者の特定等について
【意見】賛成する。
【理由】示された判断方法が,所有者等を特定することに有用である。
(2) 当該変則型登記がされた土地につき,表題部所有者の登記の職権抹消と,その表題部の登記事項について
【意見】賛成する。
【理由】所有者等が判明しなかった場合を含め,探索結果を登記記録で明確にする必要がある。
4 探索等の中止について
【意見】賛成する。
【理由】権利関係について訴訟が係属している場合には,実体上の所有者等について,裁判所の判断がなされる可能性があることから,登記官による探索は必要がない。
5 公告について
【意見】賛成する。
【理由】変則型登記がされた土地の所有者等の探索等及び登記手続を職権で行うとしても,当該土地の権利を主張する者や過去の経緯などを知る者等からの意見提出の機会を設けてより正確な登記を実現するためには,公告の方法をとることも必要である。
第2 所有者等を特定することができなかった変則型登記がされた土地の管理等に関する措置
1 変則型登記がされた土地の管理命令の創設について
【意見】管理命令の創設に賛成する。
【理由】探索の結果,変則型登記がされた土地の所有者等が判明しなかった場合でも,そのまま放置することが適当でない場合には,適切な管理及び処分ができる手段が必要である。
2 管理者の権限について
【意見】賛成する。
【理由】管理者の制度を設ける趣旨から,適切な権限であると考える。
3 当事者適格について
【意見】賛成する。
【理由】管理者の制度を設ける趣旨から,必要な権限であると考える。
4 管理者の義務について
【意見】賛成する。
【理由】管理者の制度を設ける趣旨から,必要な義務であると考える。
5 管理者の報酬等について
【意見】賛成する。但し,対象土地の財産価額が低い場合の手当も考えるべきである。
【理由】管理者が十全に職務を行えるようにするためには,適切な額の報酬を受けることができることとすべきであり,その額を定めるためには,裁判所の判断によることとすることが公平で公正な額になると考える。
6 管理者による金銭の供託について
【意見】賛成する。
【理由】管理,処分の結果金銭が生じたときは,その金銭は対象となる土地の所有者に帰属するが,その所有者が何時判明するか分からず,場合によっては判明しないままとなる可能性もある。従って,そのような金銭の管理まで管理者の責任とすることは,管理者にとって負担となるので,当該土地の所有者が判明するときのために供託を認めることが適切である。
7 管理命令の取消しについて
【意見】賛成する。
【理由】管理人に適切な管理をさせるためには,管理命令の取り消しができることとする必要がある。また,裁判所は,申立てがない場合でも管理命令を取り消すことで,適切な対応ができるからである。
第3 法人でない社団又は財団に属する変則型登記がされた土地の管理等に関する措置について
【意見】賛成する。
【理由】変則型登記がなされた土地が法人ではない社団や財団に属し,その代表者等が判明しないために所有者等の登記ができない場合も,実質的に所有者が判明しない場合と同様であるので,管理人を置いて適切な管理,処分をさせることが適当である。
なお,申立てを行う者を「利害関係人」としているが,この「利害関係人」の範囲には,公共事業の実施者や開発事業の主体なども含むものとすべきである。以上