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意見書等
2007年(平成19年)08月13日
公正取引委員会事務総局 経済取引局取引部取引調査室 御中
「独占禁止法・景品表示法における団体訴訟制度の在り方について」に対する意見書
日本司法書士会連合会
会長 佐 藤 純 通日本司法書士会連合会は「独占禁止法・景品表示法における団体訴訟制度の在り方について」(以下、「在り方」という)に対し、以下のとおり意見を述べる。
第1 意見の趣旨
1 景品表示法のみならず独占禁止法についても早急に消費者団体訴訟制度を導入すべきである。
2 独占禁止法に導入すべき差止請求権の対象は、「不公正な取引」、「私的独占」、「不当な取引制限」とすべきである。
3 独占禁止法に導入すべき差止請求権の行使要件は、不特定且つ多数の消費者に対して違反行為が行われていることで足りるものとすべきである。
4 独占禁止法・景品表示法における消費者団体訴訟制度に、損害賠償請求権を早急に導入すべきである。
5 適格消費者団体の要件は、消費者契約法に準じるものとし、同法の適格消費者団体は独占禁止法・景品表示法の適格消費者団体とみなすべきである。第2 意見の理由
1 意見1について
景品表示法につき、同法4条1項違反行為に対し、消費者団体に差止請求権を付与するとする「在り方」の指摘に賛成であり、早期に導入すべきである。
一方、独占禁止法についても、同法が禁止する「不公正な取引方法」等の違反行為の類型を消費者団体による差止請求の対象とすることによって、消費者被害の 未然防止・拡大防止を図ることが可能となる。またこれにより、公正かつ自由な競争の維持という独占禁止法の目的にも適うことになるは、「在り方」10頁で も指摘のとおりである。よって、法的構成等について早急に検討をし、先送りすることなく早期に導入すべきである。2 意見2及び意見3について
独占禁止法24条は、私人に対し、「著しい損害を生じ又は生ずるおそれがある」場合には、「不公正な取引」を対象とする差止請求権を付与しているが、同条 は、第一義的には被害者個人の救済を図ることを目的とする制度であると指摘されている(公正取引委員会事務総局経済取引局総務課課長補佐 塚田益徳 著「民事的救済制度の整備にかかる平成11年独占禁止法改正の概要」NBL690号7頁)。一方、消費者団体による差止請求は、違反行為に対する抑止力の 強化及び消費者被害の未然防止・拡大防止を主な目的とする制度であり(「在り方」3乃至4頁)、24条とはその趣旨を異にする。
ところで、独占 禁止法7条・20条では、「不公正な取引」、「私的独占」、「不当な取引制限」を対象とする公正取引委員会による排除措置命令を規定している。消費者全体 の利益のために行使される消費者団体による差止請求権は、私人が行使できる差止請求権に比べ、公正取引委員会の訴追能力を補完する性格がより強いものと考 えられるので、消費者団体による差止請求権の対象は、24条のように「不公正な取引」に限定せず、排除措置命令のように広く「私的独占」や「不当な取引制 限」まで包含すべきである。
さらにその実効性を確保するためにも、差止請求権を行使できる要件は、24条の「著しい損害を生じ又は生ずるおそれがある」に限定せず、消費者契約法と同様、不特定且つ多数の消費者に対して違反行為が行われていることで足りるものとすべきである。3 意見4について
違反事業者の「やり得」を許している現状が被害を増加させていること、消費者団体訴訟制度に損害賠償請求権を含めることによって不当な利益の吐き出しが可能となり、違反行為を抑止する効果が期待できることは、「在り方」7頁でも指摘のとおりである。
消費者団体に損害賠償請求権を付与することは、消費者全体にとって有益であることは明らかであり、早急に導入すべきである。
なお、当連合会は、消費者契約法改正にあたり、消費者団体訴訟制度に導入されるべき損害賠償請求権に関し、別添「消費者団体訴訟制度に関する意見書」のとおり提唱しており、独占禁止法・景品表示法においても妥当するものと考える。4 意見5について
消費者契約法へ消費者団体訴訟を創設した趣旨は、消費者被害の未然防止・拡大防止であり、これはそのまま、独占禁止法・景品表示法へ消費者団体訴訟を創設 する趣旨に合致する。よって、独占禁止法・景品表示法における適格消費者団体の認定要件は、消費者契約法に準じるものとすべきである。
なお、認定手続に要する時間やコストの負担削減を図るため、既に消費者契約法における適格消費者団体としての認定を受けている消費者団体は、当然に独占禁止法・景品表示法の適格消費者団体とみなされるとの規定を設けるべきである。
ところで、消費者団体訴訟制度は今後、多くの法律に導入されることが予想されることから、認定要件や適格消費者団体の監督機関等を一元化するための法整備 が検討されるべきであり、この場合にその都度個別法の改正作業を行うのではなく、消費者基本法に消費者団体訴訟制度の総論的条項を盛り込むべきであること を指摘する。添 付 資 料
1 日司連平成16年11月29日付 消費者団体訴訟制度に関する意見書