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意見書等
2009年(平成21年)05月29日
経済産業省取引信用課 パブリックコメント担当 御中
「割賦販売法施行規則の一部を改正する省令案」に対する意見書
日本司法書士会連合会
会長 佐 藤 純 通当連合会は,「産業構造審議会割賦販売分科会基本問題小委員会中間整理に対する意見」(平成19年7月30日付日司連発第442号,以下「日司連意見書」という)において,信用購入あっせん業者についての過剰与信防止等に関して意見を述べたが,今般,当連合会は日司連意見書に加えて,平成21年5月1日付「割賦販売法施行規則の一部を改正する省令案」につき,下記のとおり意見を述べる。
記
1.過剰与信防止に関する基本的な考え方について
意見
契約金額がある一定金額を超える場合は,貸金に関する調査と同様の調査を課すべきである。理由
具体的には,自社の契約につき50万円,他社との契約を合わせて100万円を超える場合については,貸金業施行規則の考え方と同様に調査を課すべきである。契約金額が高額な場合にまで,支払可能見込額調査において重要な項目となる収入や債務等について,自己申告に基づくのでは,適正な調査を期待できないからである。2.専業主婦等(特定配偶者)について
意見
(1)個別信用購入あっせんにおける,特定配偶者の支払可能見込額調査につき,当該者の配偶者の同意を要件とせずに年収等を合算できる要件である,「日常生活に必要とされる商品の購入等」の判断については,個別信用購入あっせん業者等の恣意的判断に委ねることのないよう,厳格に判断されなければならない旨を明記すべきである。(2)法35条の3の3に基づく調査記録事項として,上記(1)該当性に関する調査結果を明記すべきである。理由
特定配偶者の支払可能見込額調査については,当該販売契約等の目的が「日常生活において必要とされる商品の購入等」である場合に限り,世帯主の同意なくして,世帯主の年収等との合算によることができるとされる。
このため,世帯主の同意を避けるために,恣意的に「日常生活において必要とされる商品の購入等」であると判断される恐れがある。
以上のとおりであるから,上記判断につき個別信用購入あっせん業者等に厳格性を規定し,かかる調査記録を作成保存すべきことはを明らかにする必要がある。3.基本となる生活維持費について
意見
生活維持費につき,実態に適合した金額とすべきである。理由
規則において示された生活維持費は以下のとおり,現実に生活維持するための費用と比べ,極めて低額であって,かかる数値によっては,現実の支払可能見込額を超えた与信を許容することになる虞がある。
例えば,住宅を所有せず家賃を負担しなければならない一人暮らしの場合,毎月の生活維持費は116(万)÷12(月)=96,666円であり,都内などでは家賃にもままならない金額である。
また,住宅ローンや家賃の支払が有りの場合,無しの場合と比較して生活維持費が年間一人暮らしで26万円,四人暮らしで40万円増額されるが,毎月に換算すると一人暮らしで21,666円,四人暮らしで33,333円であり,その金額で賃貸住宅を探すことは困難を極めることは容易に想像される。4.調査義務等の例外について
意見
支払可能見込額の調査等の例外として,個別信用購入あつせんにつき店舗販売等における10万円以下の耐久消費財の購入,包括信用購入あつせんにつき,30万円以下のカードの交付等とするが,いずれも高額であって例外とするのは適当ではない。理由
そもそも,法の趣旨等に鑑みれば,支払可能見込額の調査を行った上で支払が見込める場合に契約を行うことが本筋であり,大部分が例外となるような規定にすべきではないから,調査義務等の例外は限定的であるべきところ,上記はいずれも例外としては高額である。
一定の場合には原則どおり,調査義務が発生することとされているが(規則43条第1項イ及びロ),これら事由は,例えばロについてはあくまでも包括信用購入あっせんに関する債務額のみとされているなど過剰与信防止の観点からは十分ではない。すでに持っているカードに付与されている極度額や個別信用購入あつせんに係る債務額といった信用購入あっせん全体で判断し,その額が一定基準以上の場合に調査をするようにすべきである
また,個別信用購入あっせんについては,いわゆる店舗販売等についてのみかかる例外を規定する合理的根拠は見出しがたい。5.個別信用購入あつせんにおける過剰与信防止義務の例外について
意見「生活に必要とされる耐久消費財」や,「大学の費用等」や,「生命・身体を保護するため緊急に必要とされる商品・役務」であるから例外的に契約を認めるといった除外は行うべきではない。理由
そもそも,優先的に保護されるべき法益たる「生命・身体」を保護するため緊急に必要があると認める商品等を例にとると,これに係る手当てをどうするのかは,そもそも福祉の手当ての問題,すなわち行政が検討すべき問題であって,上記の場合に,支払可能見込額を超える与信であったとしても,クレジット会社の与信を認めることは妥当性を有する結論ではない。本来は,これらの場合に,例外的にクレジット会社の与信を認めるのではなく,これらの商品等の手当てを充実させる社会を行政がつくっていくべきである。
以上のとおりであることからすれば,支払可能見込みがない場合であっても,クレジット契約を認めてよい場面とは,極めて限定的な場面に限られるべきであり,規則に挙げられている例外となる商品・役務等についてはこれを法35条の3の4の例外とする合理的な根拠は見当たらない。
むしろ,規則のような例外規定を設けるのではなく,その契約の必要性や支払可能見込みについて書面等を徴求しながら,実質的な審査をクレジット会社は行い,上記審査により,支払可能であることが認められる場合に,クレジット契約を行うというようにすべきである。6.支払可能見込額の調査記録の保存に関して
意見
記録の保存期間が,個別クレジットの場合は「最終返済日」(規則74条2項)とされているが,事後に与信判断の当否が問題となることも多い実情に照らし,少なくとも「最終返済日から3年又は契約締結日から5年のいずれか遅い日」までを保存期間とすべきである。理由
数年間に及ぶ次々販売被害事例にみられるように,クレジット過剰与信は支払完了により問題が解消するわけではなく,一連の過剰与信の問題が公序良俗違反として問題となる可能性もあるので,支払完了後もしばらくの間は過剰与信の有無について検証が必要となるからである。
7.苦情発生時の調査に関して
意見
契約締結時の電話確認により不実告知等の調査(75条2号イ)を行い,購入者に誤認があることを知ったときも,加盟店調査を行うべきことを明示すべきである。理由
電話確認で申込者に不実の告知等の誤認があることが判明したときは,その契約が与信禁止(法35条の3の7)となるが,それだけでなく,加盟店調査を行い被害防止に結び付ける必要がある。8.個別クレジット業者の交付書面の記載事項に関して
意見
個別クレジット業者が交付すべき契約書面(法35条の3の9第2項4号)の記載事項として,個別クレジット業者の「名称並びに住所又は電話番号」(81条1号,83条1号)としている点を,「名称,住所及び電話番号」とすべきである。理由
購入者が個別クレジット契約についてクーリング・オフ通知書を発するためには,個別クレジット業者の住所の記載が不可欠であり,「住所又は電話番号」を選択的に記載することでは不十分である。